十三歳の春 27
貴族の令嬢令息は、十四歳になると2年間、王都のがっこうに入学することが義務づけられている。国に対する忠誠心を植え付けるためと、いわゆる各貴族達に対するにらみを利かせるための政策の一つである。人質という奴である。そうすることによって、王族に対して反旗を翻す可能性を下げる狙いがあるらしい。勿論こんな事は、エディ先生は教えてくれない。先の嵐の村の賢者様に教えて貰った知識である。村の賢者様に教えて貰った知識だ。
「おや今日は二人ともドレスを着ているんだね。こうしてみると、全く見分けが付かないね」
白髪のお爺ちゃんが、にこやかに笑いながら立ち上がっていった。テーブルの上には、大量の教材が置かれており。その中に飲みかけのティーカップが置かれている。何時もこの人は巨大な鞄に、ぱんぱんになるほど資料となる物を持ってくるのだけれど。その全部を限られた時間内に、マリアは、見ることがなかった。
あたしは内心、このお爺ちゃんはこういった資料の類いに取り囲まれていることが、好きなのだろうなと思っている。あの資料は、賢者様の蔵書を思い出すくらいの労作だった。手書きの其れはエディ先生の手書きの物で、それでいて綺麗な文字は読みやすくて良い感じである。
賢者様に文字を習っていたはずのあたしだったけれど、あまり綺麗な文字を書けない。前世の頃からのくせ字が未だに残っている。この国の言葉はどこか西洋の言葉に近い。基本的に24文字の組み合わせによって、意味を持たせるように為ているのだ。どちらかと言えば英語に近いかも知れない。
前世のあたしは、英語は全くわからない人だったのだけれど。母国語はこの国の物なので、自然と二言語を使えるように成っていた。とは言っても、この世界に日本が存在していない以上、使えるのはリアディン王国の母国語ロウデン語のみである。日本語は異世界の訳のわからない言葉なのだ。
「でしょう。私のドッペルゲンガーですもの。御母様の命令なんですって」
と、マリアがニコニコと楽しそうに言った。
熟々今日のマリアは機嫌が良いみたいである。久しぶりに帰ってくる、父親に会えるのが嬉しいのだろう。あたしには実感がないけど。血はつながっているけれど、全く何も感じない。
本音としては、あまり好きになれないタイプだ。前世で付き合ったことのある、年上の男性を思い出すので嫌な気がするのだ。
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