十三歳の春 22
この綺麗なドレスを着たまま、一時間も待っているだけで疲れてしまう。此れならメイド服を着て、部屋の掃除をしていた方が楽だと思う。マリアと向かい合って、座っているだけしか出来ないのが辛い。なんと言っても、こんなドレスを着ていたのでは何も出来い。こんな立派なドレスじゃうごきまわれ無いのである。
コルセットを使っていないだけ、まだましではあるのだけれど。動き回れないだけ、時間の経つのが長く感じられる。
マリアとは、最近其れなりに話すことが出来るようになっては居るけれど。だからといって楽しい話題があるわけでもなし。自慢じゃないがあたしは、社交スキルはあまり高くないのだ。……すいません。ほぼ無いです。ただのF領には身が重すぎる。
貴族らしいお上品で知的な話題って、あたしの中には全くなかった。ゲームの中には、クラスメイトとの雑談なんか無かった。マリアとの間に共通の話題なんか無い。
前世なら、お洒落やアイドルの噂話をして盛り上がることも出来たけど。この領都は刺激が少なすぎた。娯楽と言えるような物は前世の日本と比べると、とてつもなく少ない。芸人は定期的にやってくるには来るけれど、決して多くは無いのである。
この世界にも、カードゲーム的な物もあった。ただ小一時間で決着を付けることが出来るようなゲームはない。しかも、目の前に居る伯爵令嬢相手に遊べる物でも無い。少女二人で遊べるような物は全くなかった。
あたしが知ってるゲームは、別名賭博と呼ばれる遊びだから。伯爵令嬢が遊ぶような物では無いだろう。メイド服を着ていれば、メイドの仕事をすることで時間をつぶすことが出来る。
「リコ。退屈そうね」
「お嬢様だって退屈でしょう」
「そんなことはないわ。あたしはこうしていても退屈しないわ。久しぶりにお父様にお目にかかれるのですもの。その事を考えるだけで、楽しくなってくるの」
マリアがにっこりと笑う。嬉しくて堪らない表情。
読んでくれてありがとう。




