十三歳の春 19
少し遅れました。済みません。
「あまりにも急なのだけど、旦那様が王都から帰ってきてしまいますのよ。だから、貴方を紹介しなければ行けないので、大人しくしていて下さいね」
「どういう事でしょうか?」
「お父様が帰ってこられるのでしょうか」
マリアの声が、あたしの質問に被ってきた。彼女の声はどことなく弾んでいる。なんだかんだ言っても、彼女の中では大事な父親なのだろう。あたしにゃ解らない感情だけれども。
「あの人は三日ほどで、王都に帰るはずですから。その間だけでも、弓の鍛錬や剣の鍛錬を、マリアとするのを控えて欲しいのよ。其れでね、普通の令嬢のように過ごしていて欲しいのよ」
奥様が訳のわからないことを言ってくる。なんか言っていることが可笑しい。何となく筋が通っていないような気がする。
だいたい、あたしの存在が都合が悪いのなら。旦那様が王都に帰るまで、どこかに隠れていれば良いはずで。何だったら、野郎の格好をして私兵団にでも紛れれば良いだけなのだ。あたしなら、そっちの方が楽だし。大事な父ちゃんと居られるから嬉しいし。
「済みません。意味が解らないのですが?」
「貴方は、マリアを守るために雇った娘だと説明しているのよ。誘拐されることの危険を下げるための、そっくりさんと説明していますの」
奥様の表情が、嘘をついていることを伝えてきている。奥様にしては、かなり浮き足立ってしまっている。かなり、焦って居るみたいである。
「いや普通にメイド服で会えば問題ないんじゃなかしら」
「そう言う訳には行かないわ。兎に角貴方はマリアの影として側に居てあげて」
あたしは、奥様に半ば強引に押し切られた。なんか奥様が焦って居るみたいなので、少し可哀想になってきたので、押し切られてあげることにする。
乙女ゲーム桜色の君に……。で知っていることだけれども、マリアの父親はあまり宜しくない貴族男性だったはずで、夫婦仲は最悪だった。デニム家の婿入りした、子爵家の四男で決定的なダメンズだったはずである。いわば紐みたいな人だ。
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