十三歳の春 15
あたしは、隣の寝室に置かれてている姿見の前で、椅子に座って、サンドラさんに栗色の髪を梳られていた。彼女は実に楽しそうに梳ってくれる。
あたしには、彼女が何故こんなに楽しそうにしているのか解らないのだけれど。初めて会ったときの、あの厳しい指導を思うと、何故あたしのことをかまうのが楽しいのか解らない。
あたしは、彼女と知り合って七ヶ月が経っており。だいたいの性格を理解しているけれど、何故かあたしに関わることが楽しいのか解らないでいた。勿論あたしに関わることも、彼女の仕事なのは解って居るけれど。他人を指導することは、体力と気力を削られる事だと思う。奥様に頼まれているとは言えど、メイドとしての仕事を熟さなければ行けないにも関わらず。基本的なことを知らないあたし見たいな、新人メイドを指導するどころか、身だしなみに気を付けてくれる。其れも嬉々としてである。
面倒見が良いと言うだけで、これだけのことをしてくれる物だろうか。何しろ彼女は二十人からのメイド達の取り纏めをしなければ行けない立場なのである。本当は、あたしなんかの面倒を見ているような立場じゃないのだ。其れなのに、あたしのドレスの脱ぎ着に関わり、まるでお嬢様付のメイドみたいに接してくる。言葉遣いは、ぞんざいで荒っぽいけどね。
サンドラさんは、鼻歌を歌いながらあたしの髪を梳る。ちなみに彼女が歌っている曲は、あたしの前世で流行っていた、男性アイドルグループが歌っていた曲である。あたしがメイドの仕事をしているときに、歌っていた歌を気に入っている。このデニム家の使用人達の、中で流行ってしまっている。言葉の意味は解らないけれど、曲自体は良いのだから、好きに成るのは当然かも知れない。もっとも、平民達の中には、仕事をするときに皆で歌を歌いながら仕事をする習わしがあるから、そういったこともあるのかも知れない。
実は最近あたしの鼻歌に、詩を付けるように無茶ぶりをされている。真逆本とのことを言うわけにも行かず、適当にごまかしていたら。あたしが作った歌だと思われてしまって、菓子まで作るようにメイド仲間に攻められている。そんなこと言われたって、簡単に作るなんて出来るわけが無かった。
取りあえず歌詞の方を、この国の言葉に翻訳して歌ってみたけど。メイド仲間の中で受けてしまっている。いま、サンドラさんが歌っている鼻歌は、苦し紛れで作った歌だった。
済みません遅れました。冠婚葬祭の方を遣んないわけにはいかなかったので。




