十三歳の春 13
サンドラさんがが焼けちゃって、声が酷く低くなってしまっているのだ。
「リコ。早いことドレスに着替えな」
「おはようございます。まだ朝食には時間が、有ったはずですけれど」
「おはようさん。でも、ドレスを着てきちんとした格好をするのには時間が無いよ」
サンドラさんのごつい手にあたしは捕らえられた。逃げようと思えば逃げることが出来るのだけれど、あたしは素直に捕まってやる。でないと面倒なことになるのである。
サンドラさんは、結構剥きになる性格なので、捕まってやる楽なのである。何しろ捕まえるまで追いかけてくるのである。
父ちゃんの格闘術を使えば、サンドラさんの体格が良くても、あたしの敵ではない。格闘技経験の無い彼女に捕らえることなど出来ないのだ。ただ手加減するのに苦労することになるけどね。
「お嬢様は、迎えの者が参っておりますから、早速食堂の方に向かってくださいませ。今日は家の宿六が担当だから、結構旨い朝食になっているはずだから。あったかいうちに食事していただけると嬉しいです」
サンドラさんが笑いながら言った。ちなみに笑いながらも、あたしの服を脱がそうとしてくる。此れってセクハラではなかろうか。何時ものことだけれど、此れもまた親愛の情の表現だと思うことにしている。
「解ったから放してくれないかな。誰かの手を借りなければいけないほどのドレスじゃないよね」
今日着てくるように言われているのは、一人で着替えることの出来るタイプのドレスだった。略式のドレスなら、今のあたしなら一人で着替えることが出来るようになっていた。流石に正式な作りのドレスは、一人では着ることが出来ないけれど。
貴族のご令嬢にとっては、他人の手助けは当たり前なのだろうけれど。前世のあたしも、田舎の村育ちのあたしにとっては肩こりの元だし、出来れば着たくない代物だった。だって、胴着とズボンの方が楽だし、女の格好ならお仕着せのメイド服の方が楽なのである。
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