十三歳の春 8
運動をするときのマリアは、あたしとおそろいのズボンに胴着を着ている。此れなら、簡単に脱ぎ捨てることが出来るのか、あたしの補助を必要とはしなかった。でも、貴族令嬢らしいドレスを着るとなると、どうしてもあたしの補助が必要になる。流石にまだ幼いので、コルセットなんか着けないでも良いから、まだ楽だとは思うけれど。何とか動きやすいデザインがはやってくれる事を祈らずには居られない。
あたしが、彼女の代わりをしているときに、暴漢にでも襲われたらと考えると。恐ろしくて堪らなかった。
このドレスを着て、立ち回りが出来る気がしない。せめて、ワンピースくらい簡易な作りになってくれると助かる。あれならはしたない格好になるけど、それなりにやれると思う。こう見えても、最近のあたしはまじめに父ちゃんに、仕込まれた格闘術を反復練習している。あまり近接戦は好きじゃないのだけれど、マリアの護衛も兼ねても居るしね。
貰っている給金分くらいは仕事をしておかないと、立場がないだろうし。せっかくハイスペックな身体を持っているのだから、生かさない手はないだろうし。最近気付いたのだけれど、かなり運動神経が良い。
鍛えていなかったから、気付かなかったのだけれど。13歳の女の子の割には、足も早く反応速度も速かった。格闘技を真面になら出すと、そちらの方面に対して才能があるらしい。
そして、出来ることが解ると楽しくなってきた。考えてみれば、ゲームのスチルの中の、ナーラダのリコは運動神経が良かった。まるで体操選手のような身のこなしを見せていた。
考え事をしながら、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の着替えを手伝いを終えた。メイドの仕事にも慣れてきて、他のことを考えながらこれくらいは出来るようになってきていた。ここには、厳しいドリーさんが居ないので、叱られたりはしないので余裕なのだ。
「ありがとう」
マリアの着替えを終えると、彼女がお礼を言ってきた。此れも最近変わってきたことだった、マリアの態度が良くなってきたのである。
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