十三歳の春 5
あたしとマリアは、連れだって屋敷の彼女の部屋に向かう。ちなみに、あたしの部屋はこの部屋の続き部屋である。いわゆる使用人部屋って奴である。ここに居れば、マリアがあたしを呼んでいれば、直ぐに対処できるようになっている。
マリアの部屋は、居間と寝室の二部屋である。居間の方では、マリアが勉強が出来るように勉強机と、ひとときの休息がとれるように、お洒落な作りのテーブルと椅子が四脚並べられている。
ちなみにあたしの部屋は、マリアの寝室に直接入ることが出来るように扉でつながっている。このあたりは護衛としての役割を期待されているのだろう。
あたしの部屋は、マリアの寝室に半分の大きさで、小さなベットが一台。小さな机と椅子が一脚が置かれている。それと作り付けのクローゼットが有るだけの部屋だ。千波のこの部屋の三方には扉があった。この扉の一方は、マリアの寝室につながっている。反対側には、誰も入っていない空き部屋につながっている。そちら側には、マリアの寝室と同じ大きさの寝室になっている。真新しい天蓋付のベットが鎮座している。
所詮十三歳の子供を狙うような人間はいないだろうから、基本的にメイドとしての仕事をするだけで、普通のメイドの、三倍の給金を貰うことが出来ていた。
あたし的には、この条件は大変有難かった。何しろリタを扶養しているので、給金が良いに越したことは無かった。リタの面倒を見てくれている、領都のおばちゃんに渡す金を用意しなければいけなかった。
リタの面倒を見ることは、今のあたしには難しかったのである。何しろ、自分の面倒ですら出来ない子供が、幼いリタを育てるのは不可能だった。最初のころは、あたしも意地になって面倒を見ようとしていたのだけれど。仕事をしながら、彼女の面倒を見るのは肉体的にも精神的にもしんどかった。
ぼろぼろになって、メイド的なことすら出来なくなったあたしを見ていられなかったのだろう。父ちゃんに叱られて、結局信用の出来るおばちゃんに預けることになった。ちなみにその信用の出来るおばちゃんを紹介してくれたのはドリーさんだった。そのおばちゃんに費用と給金を払うと、あたしの給料の半分が消えてゆく。
此れは内緒だけれど、あたしはリタを預かる宣言をしたことを、大変後悔したことは本当のことだ。あたしは子供だったって事だ。
食わせるだけでは、子供を育てることは出来ないと、父ちゃんに言われたのはすごく応えた。でも、あの時はそれが最も良いことだと思ったのだ。契約書に書いてあった内容を考えると、小さな女の子一人くらいは養えることが出来ると思ったのである。甘い考えだったことを認めなければいけない。
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