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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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十三歳の春

長いことお休みしてしまい済みません。

パソコンにウイルスが感染してしまい。風邪を引いてしまいまして、入院しておりました。

再開致しますね。


 まだ其処いらに雪が残っている。それでも、冬は確実にデニム伯領を退散しようとしていた。日向は少しだけれど、暖かくなってきている。

 どこからか、パンを焼く良い匂いが漂ってくる。あたしは、朝の日課のジョギングをする足を止めて、だいぶ遅れているマリアの方を眺めた。寒いので、吐く息が白い。今年の冬は例年より寒かったので、春になるのが少しばかり遅れているのだ。

 あたしの名はナーラダのリコ。今の処、デニム伯爵家の護衛件メイドだ。何故か途轍もなく優遇されている使用人さんだ。この間、誕生日が来たので十三歳になった。どうも良い食事を取るようになったせいか、身長も胸の膨らみも大きくなった気がしている。

 乙女ゲーム桜色の君に……の悪役令嬢マリア・ド・デニム伯爵令嬢の姿には穂遠いけれど、ちょっぴり近付いた気がしている。筋肉が付いたせいか、身体が軽い。この身体は、元々運動神経は良かったのだけれど。あんまり良い物を食っているいから、筋肉が付いていなかったのよね。実際裸になると、つるつるぺったんこだったしね。

 十二歳のマリア・ド・デニム伯爵令嬢とあまり変わらなかったのは、大人の事情だと思っていたら、誘拐事件のあった少し前まで、大病を患っていたらしく未だに時々寝込んだりしている。

 あたしは病弱な彼女の代わりに、公務を勤めたりしている。何しろあたしの見た目は、知らない人には見分けが付かないほどそっくりなのである。実は内緒だけれど双子なのだ。

 あたしは生まれたばかりの時に、デニム家の先代の命令で、山に捨てられた赤ん坊だった。この国では、双子は獣腹と言って嫌われていた。だから、先代の命令であたしは捨てられた。本当なら、山の獣に美味しく食べられてしまっていたはずで。こうして自分の妹と、肩を並べてジョギングなんか為ているわけが無かった。

「速すぎ」

「お嬢様が遅すぎるんですよ」

 やっと追い着いてきた、マリアがあたしに抱きついてきた。令嬢としてはどうなんだろうという振る舞いである。ドリーさんが見ていたら、きっと雷が落ちただろう。この時間は、彼女は侍女としての仕事の準備に忙しいはずで、きっと見ていないだろうけどね。だから、マリアが、気を抜いているのだろう。

 デニム家のお屋敷の庭は、かなり広々としている。しかもあたし達が居るところは、私兵達の鍛錬嬢となっている場所である。今ここに居るのは、この時間から鍛錬をしているような、まじめな兵士達しか居ない。最近朝からジョギングしている、まじめな兵士が増えているのだけれど。

 父ちゃんが言うことには、鍛錬することは良いことらしいから。あたしは気にしない。貴族達よりずっと、付き合いやすいから嬉しいし。偶には褒めてくれるしね。

 


 


読んでくれてありがとう。

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