いつの間にか眠ってしまったみたい 2
あたしはドリーさんが持ってきてくれた、メイド服に袖を通す。何時洗濯してくれたのか、このメイド服は綺麗に洗濯されていた。昨日まで着ていたメイド服なので、あたしがお嬢様の真似事をしている間に洗ってくれたのだろうけれど。良く乾いていた。
着替えたあたしは、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の寝顔をちらりと見て息を吐いた。令嬢としてはまだ寝ていて良い時間だ。使用人と貴族の子供では立場が異なる。それは解っているのだけれど、複雑な気持ちになってしまうのは仕方が無いだろう。
何しろ姉妹なのだから。
だからといって、入れ替わりたいとは思わないのだけれど。たぶんこのまま成長すれば、悪役令嬢を妹が演じることになる。さくらいろのきみに・・・のような事件を引き起こすことになるかは、解らないけれど。あたしとは違うのだから、国を傾かせるような愚かなことにならないと思う。そう信じたい。
今の彼女の言動を見ていると、別の意味で心配になってくる。隣の国は、、何だか嫌な感じでちょっかいを掛けて居るみたいだし。その事は納得できるのだけど。何しろ、国が戦争になるのはゲームの中で語られているのだから。その進撃路が、デニム伯爵領だった。
デニム伯爵の守る領都が落ちることは、この国の守りの最も弱いところに侵入することが出来るらしいのだ。だから、絶えず色々と仕掛けてくる。
そして、デニム夫人は事実上の要になっている。ゲームのスチルの中に隣国の軍隊が、領都を取り囲むスチルがあったのを、あたしは覚えている。ゲームを遣っているときは、単なる背景描写に過ぎなかったから、それほど気にもとめなかったけれど。そうなる前に、あたしの村は踏みつぶされてしまったのだろう。
本当にゲームにそっくりだ、このまま行くとあたしの村は5年以内に戦争に巻き込まれる。悪役令嬢にならなくても、必然的にこの国はなくなってしまう。そうなれば、どれだけの人が不幸になってしまうか解らない。
そうならないためにはどうしたら良いのか。単なる不良に何が出来るか解らないけれど、一寸は未来が解っているのだから、何か出来るかも知れない。妹が平和な顔をして眠ることが出来るように。
「起きると可愛くないけどね」
ナーラダのリコは少し年を取ります。




