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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ベッドの中で 3

 マリア・ド・デニム伯爵令嬢は、自分で言うほど回復していなかったのだろう。本当なら救急車を呼ばなければいけない状態だったのである。この世界には、前世のような医療体制は存在していない。当然のことながら、緊急医療などという概念すらなかった。

 処によっては、緊急事態には神頼みである。医者はいるけど、領都にですら数えるくらいしか居ない。怪しげで危険な治療をするような医者擬きは存在しているらしいけど。村には一人も居なかった。

 村の衆は、教会の神官様を頼るか、賢者様に相談することが多かった。ちなみに、出産については産婆に相当するおばちゃんがいる。

 あたしは、たぶん母ちゃんが身体を悪くしたのは、出産の時にまともな医者に掛ることが出来なかったからだと思っている。前世で読んだことにある、ラノベだと問題解決の知識があるのだろうけれど、全くどうしたら良いのか解らなかった。

 救援部隊なんだから、医者を連れてきていれば問題なかったはずなのに。それが出来なかったのは、決定的にまともな医者がいなかったからだ。病気になったら、皆死ぬことを覚悟していたりするのだ。せめて苦しまないで死にたいと考える。死後の世界で神の御許に行きたいと願うのである。

 あたしはそんなことを考え始めたら眠れなくなった。いつもより良いベッドに寝ているのだから、眠れても良い気がするのに。眠気がどこかへ行ってしまった。

 あたしがこんな事を考えるきっかけは、メイドさんの中の一人が、あたしのことをお医者様のように話しかけてきたからだった。まるで尊敬するみたいに、あたしのことをリコ様ですって。病気に苦しんでいる家族の症状を話してくる。助けてあげたかったけれど、あたしにはどんな病気なのか全く解らなかった。

 だいたい普通の不良にそんな知識があるわけ無い。簡単な物なら何とかなるかも知れないけれど、ちゃんとした医者に診て貰った方が良いと思う。賢者様の家になら、それなりの本があったけれど、読んでみたこともない。

 手書きの書物は大変読みにくい物なのだ。賢者様の努力の結晶なのに、今回の嵐で失われてしまった。賢者様が無事で居てくれることを祈らずにいられなかった。



 

お疲れ様です。今日は日曜日なのに、仕事の予定。

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