食事会の後で 5
「えっと。あの、契約書に書いてあった支給品の中に、ドレスや下着も入っていたの」
あたしはびっくりして聞き返す。給金は結構良かったけれど、必要な支給品がこんなに馬鹿高い物だとは思わなかった。だいたいドレス一着だけでも、とんでもない金額なるのだ。ドレス一着だけでも、金貨が何枚も消えるような代物で、マリア・ド・デニム伯爵令嬢のドレスだと思っていたのである。
「当たり前じゃない。他人が着たような物を、あたしが袖を通すわけがなのだから。あたしも同じ物を持っているわよ」
マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、天蓋付のベッドの中から叫んでくる。どうも、彼女はあたし達の会話に聞き耳を立てていたらしい。元気が出てきたようで何よりである。
「お嬢様はお休みになっていて下さいませ」
と、ドリーさん。少々とがめる感情が交じっている声音。
「はーい」
マリア・ド・デニム伯爵令嬢は、意外なほど素直な返事。なんか彼女は、ドリーさんの言うことにを素直に聞くのが意外だった。
「貴方は身体を綺麗に致しましょうね。女の子なのだから、身ぎれいにしておかねばいけませんよ」
「あたしは村の中では、身ぎれいにしている方だと思うけどね」
あたしは、前世の生活パターンが残っているので、なるべく身体を洗うようにしていた。だから、村の女衆と比べれば、綺麗にしている方だと思う。ただ、お湯を使ったお風呂なんかには、入れるわけもなかったので、水浴び程度だったのだけれど。それでも、臭うようなことはないと思っている。
あたしは他人に裸を見られながら、身体を洗うのは慣れないので、出来れば後ろを向いて貰いたかった。あたしは貴族の御令嬢ではないのだから。じゃなければ、同じように裸になって欲しい。とりあえず、手短に身体を清めてゆく。
お疲れ様です。




