食事会の後で 4
「処でリタはどこに行っているのかな」
あたしはドレスを破かないように気にしながら、脱ぎながら尋ねた。ドリーさんは見事な手際で、あたしがドレスを脱ぐのを手伝ってくれる。熟々貴族の衣服というのは、脱ぎ着が難しい構造をしている。もう少しシンプルな構造にしても良いのじゃないかと思う。日本の十二単よりは増しだけどね。
「あの子は、貴方のお父様の所に行っているはずですよ。なんだかんだ言っても、貴方のお父様は子供好きみたいね」
「そっか。兵隊さんの幕屋にいるって事か。あそこの方が居心地が良いかもしんないね」
食い物はそこそこ旨いし、兵隊さん達は気さくでいい人達が多いのだ。悪さをされる可能性はあるかも知れないが、父ちゃんの側なら何も出来ないだろう。悪さをするように奴がいれば、地獄を見ることになる。しばらく使い物になら無くされることになる。
あたしは手早く下着を脱ぎ、床の上に置いたところをドリーさんに奪われた。
「一寸。それあたしの」
「だいぶ汚れているから、この下着はメイドに任せなさい。代わりはちゃんと用意してありますわ」
ドリーさんが、下着と寝間着を入れたかごを床に置いた。その下着も寝間着も、何となく新品みたいなのが一寸気になった。もしかして、お嬢様の物なのではないだろうか。
「此れって、新品みたいだけど。どういう事なんですか」
「奥様からの支給品ですから、気になさらなくて宜しくてよ。このかごにある物も、先ほど着て要らしたドレスも、貴方の物ですわ」
ドリーさんが、驚きのことを言ってきた。彼女は当たり前のことを言っているような表情で、目は何時も笑っている。それでも、その声音は有無を言わせな。
あたしは彼女が、少なくともメイド頭的立場なのかも知れない。何だか皆に命令し慣れている雰囲気があった。
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