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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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食事会の後で 3

「素直に着替えてくれると、私としても助かりますわ。もし必要なら、身体を清めるためのお湯も用意してありますわよ」

 ドリーさんは、本当に仕事の出来る女みたいな感じで、あたしにやんわりと命じてくる。そりゃあたしの方が、ずっと下っ端なのだから、言うことを聞かなければ行けないのだろうけど。何で、御令嬢の側のベッドに、あたしが寝ることに決まっているのか訳がわからない。一応血はつながっているのだけれど、それは未だに皆知らないことになっている。ちなみに、あたしも知らないことになっているのだから。前世の記憶があるあたしだから、マリア・ド・デニム伯爵令嬢とは姉妹だって知ってるけどね。

「あたしのために用意してくれたんだ」

 思わず聞き返してしまう。わざわざお湯を沸かす手間を考えると、相当な重労働になるのである。簡単に身を清めるだけなら、さしたる手間でもないのだろうが。それでも、一使用人のために用意するのは、気味が悪いほどのサービスと言えるだろう。

「お嬢様のためのお湯を湧かす序でですから、それほどのことではありませんよ」

 ちらりとドリーさんが、灰色のカーテンで仕切られている方を見た。たぶんあちらに桶に入れらた湯が満たされているのだろう。もしかしてお嬢様が使った残り湯。それでもかまいはしないけどね。

 あたしはカーテンの中を覗いてみた。其処には、思いの外大きめのおけが一つ。その桶の中には、綺麗なお湯が満たされている。床が少し濡れているところを見ると、マリア・ド・デニム伯爵令嬢が使った後なのだろう。

「うん。使わせて貰おうかな」

 あたしは一応汗を拭き取れるだけでも、有難いかも知れないと思った。前世のように、ふんだんにお湯を使えるわけではないのだから、これだけでも贅沢に違いない。

「では、リコさん。まずはドレスを脱ぎましょうね。そうして、私が身体を拭いて差し上げますわ」

「ドレスを脱がせてくれるだけで良いよ。自分の身体ぐらい自分で拭けるからさ」

 他人に身体を拭いて貰うなんて、病人じゃないのだから。勘弁して欲しい。


読んでくれてありがとう。


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