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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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契約成立

 面接は途中にティータイムを挟んで行われた。結構長い話し合いは、あたしらには少しばかりきつい。前もって書類を渡しておいてくれれば、こんなに時間をかけなくてすむのにと思う。デニム伯爵夫人の都合なのだろうし、書類の中にトラップが仕掛けられているかも知れなかったから、時間をかけてすべての書類を精査させてもらう。気を付けないと酷いことに成ってしまうので、書類はきちんと読まねば行けない。其れが,貴族との賢いつきあい方なのだ。

 雇用条件はかなり良いと思う。あたしの仕事は、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の代わりに、動くことで彼女の危険を減らすことだ。ほんとに影武者的なことをするように書いてあるよ。結構命がけの仕事じゃ無い。でも、十二歳の子供を狙う理由って、何があるんだろう。

 まあ月に金貨三枚の、住み込みで食事付。その上、個室を用意してくれるんですって。ものすごく条件が良い。金貨一枚が、だいたい五万円くらいだから、十二歳の子供が十五万円の給料をもらい個室あり食事付は悪くないと思う。だまされてるかな。

 父ちゃんに対しても、就職と考えるならかなり良い。ただ、あたしらに拒否権が無いってのが引っかかるところかも知れないかな。乗りかかった船だし、遣ってやろうじゃ無いの。マリア・ド・デニム伯爵令嬢は生きてるし、あたしが悪役令嬢やらなくても良いだろうから、使用人枠で良いんじゃ無いかな。上手くたち回れば、使用人も一緒に破滅したりしないよね。

 ゲームの本編が始まるのが、今から三年後の春からだから、其れまではまったりと給料もらって、暮らしてれば問題なしだろうし、父ちゃんの給料も考えに入れれば、村で猟師遣ってるよりは良い生活が出来る。

 そんなことを考えながら、あたしはマリア・ド・デニム伯爵令嬢の方を眺める。彼女は始めてあったときより、何となく幼く見えた。

 未だにあたしのことを、ドッペルゲンガーだと思っているのか、その栗色の瞳におびえが見える。相変わらず、伯爵令嬢にぴったりくっついて離れる気配が無い。怖かったのだから仕方が無いのかも知れないが、同情する気にはならなかった。

「デニム伯爵夫人。いつからこの仕事に入ることになるのですか?」

「出来れば今日からでもお願いしたいわ。とは言っても、色々と準備もいるでしょうから。五日後の正午には、仕事には入ってもらいます」

 あたしは引越しのことを考えると、妥当なところかと思う。意外にあたしらのこと判ってはいるみたい。

 

 

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