あまり楽しくない食事 3
ランプの灯りに浮かび上がった、皆の表情はあまり楽しそうな物では無かった。油が燃える獣くさい臭いが、あたしの鼻腔を刺激してくる。この臭いは日本の生活を知っているあたしにとっては、あまり好きになれない臭いだった。
だいぶ緊張しているのだろうな。あたしには豪華な食事なのだけれど、決して美味しいと感じられなかった。
騎兵の隊長さん以外は、食事を楽しんでいるという感じではないかった。確かに皆、笑顔を作っているのだけれど。その瞳に笑みが浮かんでいない。それぞれに思惑があるのが、この席に座ると見えてくる。
あたしが座った席から、全員の表情を観察することが出来た。こういう場所に座るのは、気分の良い物では無いなと思う。
「どれほどの被害があったかと、思っておりましたが」
「はい。村の衆には、一人も被害が出ませんでした」
「小麦畑が受けた害については、使い物にならなくなった畑は五分の一程度ですし。ナーラダ村と違って、建物が流されてしまった物もありませんし。ただ、出来れば税の部分で優遇していただければ、有難いのですが」
と、村長さんが言ってきた。
ロジャー・ド・タンドリンさんに視線を向けると、少し厳しいけれど承認の合図をしてくる。あたしの頭の中で、想定問題集のうち最も可能性が大きいと言われている言葉を思い出す。
「もちろんその事は、御母様から言われております。税についてはしばらくの間、優遇することを決めてきています」
村長さんが、ホッとしたように息をついた。カトラリーの動きが止まっている。一番聞きたかったことなのだろう。
「子細については、タンドリンと詰めて下さいませ」
お疲れ様です。




