ドッペルゲンガーの初仕事 24
「御母様は領都で起きた事件の解決次第こちらに向かいますわ。そして本格的に復興に着手することに成りますから、安心していただけると幸いですわ」
あたしは暗記した台詞を口に出す。言ってて何の意味があるのか解らないような言葉があるのに、それでも言葉にすることが必要なのだろうと思う。ナーラダ村よりはずっとましなのだから、良いじゃないかと口に出したくなる。
それでも当人にとっては、しんどいことなのだろう。そう思うことにする。出ないと表情に出てしまいそうだ。
第二次救援部隊は、この村から離れた場所に幕屋を張って其処に駐屯することになっている。なるべくなら、村の衆に負担を掛けないようにする。それが救援する最低限のことだと思われるから、やって来た部隊の人が幕屋に泊ることは良いことだと思う。そう言う意味で、デニム伯爵家の人間はましなのかも知れない。
ただ、部隊の主要な人間は村長の屋敷に泊ることになっていた。そのあたりは仕方が無いことなのかも知れない。
つまり、お嬢様とそのご一行は、きちんとした部屋に泊ることになっていた。ぶっちゃけ、デニム家の紋章着きの馬車に乗ってきた者は、村長の屋敷か宿屋の方に部屋を取ることになっていた。何故かあたしも、村長の屋敷に部屋をあてがわれることになった。
「食事を屋敷の方に用意しましたので、ご一緒出来れば幸いです」
想定問題集以外のことが、あたしに掛けられた。災害によって疲弊しているはずの村で、食事の用意が出来るとは思っていなかった。実際持ってきた食材で、何か作る予定だったのである。その為の兵隊さんも一緒に来ているしね。
「え……それはこんな時に、申し訳ないですわ」
思わずあたしはそう言った。
「大丈夫です。それくらいの余力は私どもの村にはありますので」
村長があたしの側に近付いて言った。
「それは有難いのですが、泊る場所を提供していただいた挙げ句、食事までは申し訳なく思うのですが」
ロジャー・ド・タンドリンさんが、お断りの言葉を言ってくれる。あまり長い時間村長さんに一緒に居られると、化けの皮がはがれるかも知れない。そう思って断ってくれようとしている。
済みません。実は確定申告のために少し忙しくなります。手か、追い詰められております。少しお休みいたします。




