ドッペルゲンガーの初仕事 18
「確かに契約書にはそう言うことをしてくれるように書いてあったけど。もう少しお嬢様を観察してからと、考えてたんだけど」
「此方の村なら、簡単に入れ替わることが出来ると思います」
と、ドリーさんが言った。その有無を言わせないニコニコ笑顔が、あたしは少し怖くなった。他のメイドさん達とは違い、彼女の笑顔にはすごみがある。
綺麗な顔立ちをしているけれど、年相応の可愛らしさが感じられない。すごみのある怖い女って感じだ。
「リタさんは私が責任を持って、面倒を見させますから安心して、お嬢様の身代わりをしてみてくださいませ」
「……。解ったわよ。遣れば良いんでしょ」
この一言で、あたしが急遽、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の身代わりをすることになった。とりあえず夜の間だけ、お嬢様のドレスを着て、村長達との会合に出席することになった。まだこの村は、ナーラダ村ほど酷い被害を受けていない物の、間違いなく小麦の収穫量は、大幅に下がるだろう。そして、復興のための足がかりとしての、デニム家からの支援の話が必要になっているらしい。
この村は、ナーラダ村と異なり。人的被害もそれほど出なかったため、既に復興の話が出てきているのだそうだ。
馬車の中で移動しながらの、貴族御令嬢に化ける作業は大変だった。黙って、ニコニコしながらあたしの服をひんむいたドリーさんは、下着から何まで取り替えてくれる。実に準備の良いことに、下着も新品を用意していた。まあ助かったのは、十二歳の子供の身体だったので、コルセットは使わずに済んだ。
あんなもん付けられたら、身動きできなくなる。貴婦人達は、美しく見せるためだからといって、よくまあ付けていられると思うわ。
お疲れ様です。




