ドッペルゲンガーの初仕事 15
「なんであたしも馬車に乗らなければ行けないのかな」
あたしはドリーさんの綺麗な顔を見詰めて聞いた。あたし的には、父ちゃんが乗る馬の、後ろに乗っても良かった。
「まだお嬢様の様子を見ていて欲しいからね」
ドリーさんは、ニコニコと笑って答えた。どうもあたしのことに対して、大きな勘違いされてしまっているかも知れない。医療行為が出来ると思われていたら、嫌だなと思う。変に期待されていたら、あたしの立場がやばくなる。
「一応言っておきますけど、あたしに出来るのは応急手当までですよ。本当は医者を呼んで貰いたかった」
あたしは、この領都に住んでいる医者が、あまり当てにならないことを知っていたけれど。この世界では、お呪い的な医者しかいないのだ。
「たぶん私には、あんな方法は思いつきもしなかったですし。せいぜいが、水を飲ませて冷たいタオルで、頭を冷やすことぐらいしか出来なかったでしょうしね」
と、ドリーさんが言った。その顔には、あたしのことを頼りになると、考えているように見える。当てに為れたらやばいかも知れない。
「お嬢様は、誘拐事件の心労が癒やされることなく。第二次救援部隊に同行することになったから、弱ってしまっていたんでしょう。だから、日照神に取憑かれてしまったんだと思う」
「確かにお嬢様は、最初から体調を崩していたように見えていたけれど。私はお止めすることが出来なかったわ。反省しないと行けないわね」
ドリーさんが、眉間に皺を寄せて腕を組んだ。それが癖なのだろうか、あたしは彼女が考え事をするときに、腕を組むことに気付いていた。真剣に反省しているのだろう。
反省していたからと言って、単なるメイドさんには、主人の公務に口を出すことは出来なかったのでは無かろうか。気に病むことでも無いんじゃないかな。どのみち、誰かは責任者として第二救援隊に、同道しなければ収まらなかったろうし。
マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、本当に悪くなるまで我慢してしまったのが行けないのだから。ドリーさんには責任はないと思うのだ。
お疲れ様です。




