表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/1216

ドッペルゲンガーの初仕事 10

 マリア・ド・デニム伯爵令嬢の容態は、直ぐに回復するような状態ではなかった。簡単に回復してくれる物じゃない。入院加療を必要にするほどやばかったと思う。救急車を呼んで、直ぐに病院から帰ってくることが出来るわけが無い。兎に角無理はさせられないだろう。

 まあ、だからといって、こんな処に立ち往生しているわけにも行かないかな。兎に角後暫くは、子の涼しいところで休ませる必要があるかも知れない。ただ、馬車の中に座っているのはしんどいかも知れない。馬車の中は、外と比べると暑いのだから。狭い空間に閉じ込められての移動は、弱った彼女には厳しいかも知れない。なんだかんだ言っても、誘拐事件からあまり時間が経っていないかったのが、日照神に取憑かれた要因の一つだと思う。十二歳の子供には、精神的ストレスは相当大きかったのだろう。

 あたしは、マリア・ド・デニム伯爵令嬢に同情的になっていた。本来なら外に出ることが怖くなってしまっても、彼女を責められない。引きこもりになっていたって不思議でも何でも無いだろうし。そんな状態にもかかわらず、自分からこの救援部隊に参加する事を決めたのだそうだ。

「私は大丈夫だから。しっぱつしましょう」

 焦点の合っていない瞳を、ドリーさんに向けて、マリア・ド・デニム伯爵令嬢が言った。その声は弱々しくて、あきらかに無理をしていますという感じである。

「まだ無理だね。今無理すれば、また足止めになっちまうよ。とりあえずもう少し良くなるまで、ゆっくり休んだ方が良い」

 あたしは彼女の首筋を冷やしている、タオルを取り替えながら言った。実際、まだ熱があるのだから、あまり無理をして欲しくなかった。このあたしの中途半端な知識では、これ以上の事をしてあげることは出来ない。

 不思議なことだけれど、この子と話していると心の底に、情のような物が芽生えてきていることを、あたしは感じ始めていた。中の人的には、ゲームのオープニングシーンで退場してしまった不幸なモブキャラに過ぎないのだけれど。血なのかな。あたしの心の奥底に暖かい何かが芽生えてきている。


読んでくれてありがとう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ