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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ドッペルゲンガーの初仕事 7

 マリア・ド・デニム伯爵令嬢は、下着だけの姿になっていた。ここまで脱がすこともなかったかも知れないけれど、まだ着ていることが出来るドレスを、びしょびしょに濡らすわけにはいかないと思ったのである。たぶんあたしの常識的な衣服の値段を、遙かにしのぐ代物だから、なるべくなら汚してしまいたくはない。

 この時代のタオルは、あたしの知っている日本の物と、全然異なっていた。貴族様が使っているからと言って、ふんわりしている訳でもない。ぺらぺらな生地で、保水力に期待できなさそうなので、きっちり絞ってもドレスを濡らしてしまうだろう。

 でも熟々夏の暑さに耐えられないだろうなと、あたしは思った。何しろ下着ですら生地の量が多いのだ。

 触ると良い生地なのは解るけれど、あたしが前世に使っていた下着と比べると、だいぶ質が落ちる。生地ですら手作業で、作られている物なので、比べものに成らないかも知れないけどね。

 最もあたしが今している下着の質と比べるなら、とんでもなく良い物だと言うことだけは断言できる。何しろ縫製からして違うのだから。あたしのは、村の女の子のお古を直した物で、彼女のは間違いなく、誰かに作らせた物に違い無かった。一寸うらやましいぞ。

 あたしはとりあえず首と両脇のしたと、股の付け根の部分に樽の水で濡れたタオルを絞って、押しつける。此れってやばいと思う。本当なら救急車を呼ばないと行けないと思う。

 あたしに出来るのはここまで。所詮高校を真面に出ていないような、不良娘に何をさせると言いたい。

 ただこのままほっとくと、間違いなくマリア・ド・デニム伯爵令嬢は死んじゃう。日照神は、たまに人を取り殺すことがある。

 まだ彼女は若いのだから、体力もあるし抵抗してくれると思うけれど。せっかく命を助けたのに、こんなに簡単に死なれちゃ困る。

 あたしは祈りながら、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の肌をさすっていた。かなり体温が高い。それでも、少しだけれど意識があるのは希望が持てる。飲ませた水分が汗になって、体温を下げてくれれば、回復してくれるだろう。

 ゲームのオープニングシーンとは違うけれど、あたしに出会って、死なれるのは嫌だ。この国の破滅が確定してしまうようで嫌だ。

 ゲームの通りの展開になれば、ナーラダ村なんか真っ先に蹂躙される。そんなのは御免被りたいのである。



お疲れ様です。


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