ドッペルゲンガーの初仕事 3
あたしは父ちゃんが来る間に、馬の背にくくりつけていた荷物袋を下ろした。袋の中に突っ込んである、鍋と木のカップとあたし特性のスプーンもどきを取り出した。塩分と糖分を取らせれば少しは良いかもしれない。後身体の要所を冷やして安静にさせておけば、とりあえず回復するだろう。勿論無理はさせられないかも知れないが。
お嬢様つきのメイドさん達が、あたしのことを眺めている。あたしは一寸いらっとして、彼女達の方を睨む。どうしたら良いか解らないのだから、仕方が無いのだろうけれど。それなら声を掛けてきたら良いのに。
「綺麗なタオルを六枚貸して。それとお嬢様を他の人に見えないようにしたいので、大きな幕か衝立になりそうな物を用意してくれないかな」
あたしは、使用人としては先輩に当る彼女達に、仕事を頼むことにした。普段ならばてきぱきと、仕事をこなす彼女達も、こういった非常時には、どうすることも出来ないのだろう。本当ならあたしも、彼女と同じようにしていても、可笑しくは無かったのだけれど。前世でたまたま、熱中症で倒れてしまったおじさんの解放をした事が遭った。その時は、テレビ番組で解説していたことを思い出しながら、必死に介抱して、救急車を待ったことを覚えている。
「おい。お嬢様はだいぶ悪いのか?」
父ちゃんがやって来て声を掛けてくる。あたしが真顔で言っているのに気付いたみたいだ。
「うん。だいぶ衰弱してるし。ただ水を飲ませて、休ませるだけでは簡単には回復しないかも知れない」
「リコちゃん。砂糖と塩を持ってきたわ」
メイドのドリーさんが、小さな小瓶に入れられた塩と砂糖を渡してくる。
「ありがと。助かる」
あたしの水袋から、鍋に水を注ぎ込み、砂糖少々と塩を入れてスプーンもどきでかき混ぜる。やがて砂糖と塩が水に溶けた処を、スプーンもどきですくって味見をした。あまり旨くは無いが、とりあえずただの水よりは有効な代物だろう。ちゃんとテレビ見ておくんだったな。此れで良いのかどうなのか解んねえ。
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