ドッペルゲンガーの初仕事
第二次救援部隊は歩みを止めていた。あたし達が追い着いてきたから、動きを止めいていたのかと思ったのだけれど。そうでも無いようである。
どうやら少し前から、隊の進行は止まっていたみたいである。あたし達の方が速く動いていたから、早くも追い着いたのかと思っていたのだが、どうも違ったみたい。思わぬアクシデントに見舞われていたのだ。
マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、馬車の旅に耐えられなかったらしい。此れまでの精神的な疲労と肉体の疲労に、彼女は高熱を出して寝込んでしまった。この場所には優秀な医者などいない。当然のことながら、出来ることは馬車を止めて休ませることしか無かったみたいだ。
あたしは相変わらず馬上の人を為ている。とりあえず馬を貸してくれた人に、会うまで馬に乗っていても良いかと思ったのである。少しくらい楽しても良いよね。
メイドのドリーさんが、あたしを迎えに出てきた。その表情は青ざめていて、彼女の方が倒れてしまうのではないかと、あたしは思ってしまった。
ルイスから貰った焼き菓子を、こりこり囓りながら彼女の青い顔を見詰める。ちなみにちゃんとリタにも分けてある。勿論こんな態度は決して良いことでは無いけれど、所詮あたしは育ちの悪い村娘にしか過ぎないのだから。文句を言われる筋合いでは無いのだ。
「いったいどうしたんですか?」
あたしは馬上から声を掛ける。だいぶ彼女が焦っている様子に、マリア・ド・デニム伯爵令嬢のようだいぶ悪いことを察することが出来る。
「たぶん日照神に取憑かれたのだと思うのだけれど、かなり状態が悪いのよ。このままでは動くことも出来ない」
「えっと。冷たい水を飲ませましたか。ここには涼しいところは無いから、日陰に寝かせてありますか」
「それくらいはやっているわ。それでも症状が改善しないから、隊を止めているのよ」
ドリーさんは普段の落ち着き払った態度を、どこかに忘れてしまったように言った。あたしは内心面白いなと思いながら、彼女の顔を眺める。
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