ようやく追い着いた 4
第二次救援部隊に向かった騎兵の一人が、また戻ってきた。彼の顔からは先ほどの緊迫した表情は無い。恐らくリタを迎え入れることの、承認を取り付けてきてくれたのだろう。実際ここからリタに、一人で帰れとは言いにくいはずなのだ。それは死ねというのと同義だから。
「とりあえずクリス様がその娘と会うそうです」
小太りクリスの顔があたしの脳裏に浮かぶ。難か苦労掛けてる感がする物の、あんまり変なことも言わないかなと思う。少なくとも、一人で村に帰れとは言わないだろう。
「で、どうしてます。お嬢様は元気に為ていますか?」
「実はお身体を壊してしまっております。流石にここまでの行程は強行軍でしたから」
戻ってきた騎兵のおじさんはそう答えてくれる。二十代の男性に対しておじさんは酷いかも知れないが、あたしの目から見るとおじさんとしか言い様がない。気の毒だから口には絶対に出さないけどね。
ちなみにこのおじさんは、以前馬車の隣で焼き菓子を食っていた人だと言うことを、今思い出した。試しに一寸頼んでみようかと思う。
「今何か甘い物でも持っていませんか?リタに食べさせてあげたいんだ」
ちょっとばかし良いとこのお嬢さんスマイル(0ギル)を、振りまきながら言ってみる。ちなみにマリア・ド・デニム伯爵令嬢の笑顔の真似である。似ているかどうかは、まねているあたしには解らない。
「彼女リタって言うんだ。お・・・自分はアークフェのルイスって言います。以後宜しく」
「あ、御免。あたしはナーラダのリコって言うんだ。今後とも宜しくね」
あたしは馬上で、あまりおしとやかでは無い挨拶を為てみせる。たぶん兵士同士がする挨拶なので、そんなに違和感は無いんじゃないかなと思う。このての礼儀作法も、父ちゃんに仕込まれた物だ。ちなみに、父ちゃんに仕込まれた者の中で、貴族風の挨拶の仕方もちゃんと身についている。それを仕込んでいたときの父ちゃんが何を考えていたか、ゲームのストーリーを知っているあたしは察している。
すごく悪いことを考えていたのだ。マリア・ド・デニム伯爵令嬢にとって、あたしはドッペルゲンガーと成るところだったのである。彼女を殺して成り代わる怪物に。
ようやく副反応が収まり、小説を書くことが出来るようになりました。何とか明かずに済んで良かった。
読んでくれてありがとうです。




