一寸休憩 3
とりあえずここで腹ごしらえしておいた方が良いと、あたしは自分で判断する。父ちゃんには、普段から自分の身を守るために、色々と考えて動くように言われている。急いで先行している第二救援隊に追い着く方が良いのか、ここで疲れを癒やして向かった方が良いのか、悩むところだけれど。あたしは主腰休んだ方が良いと判断する。
リタがかなり疲れているし、あたしや馬たちも疲れていることが見て取れる。いちいち父ちゃんの判断を聞かなくても、此れは休んだ方が良さそうだ。どのみち疲れ切った馬を酷使したところで、得るものは全くないのだから。正直あたしの足腰は悲鳴を上げていた。
念のために馬の背にくくりつけておいた、小さめに作って貰った小さなスコップを徐に取り出して、少し下草を掘り起こす。焚火をするための場所を準備する。あたしらは以前もこの場所で、キャンプしたことがあったので簡単だった。良い全焚火した後には、焼け残りの木が顔を出す。
林の下草の中に転がっている、小枝を集めてそれに加える。そして荷物袋に放り込んでおいた、小さめのずた袋を取り出すと、そこに入れておいた乾いた藁を徐に置く。そして、懐から火打ち石を取り出し。パンパンと火打ち石を打ち付ける。一分も掛らずに藁に火が付いた。此れも父ちゃんに仕込まれた生きるための技術だった。
ここで生きるための知恵は前世にもあった物だけれど、ほとんど経験のないものであり。本当に、使えない机上の知識に過ぎない。此方に来てから、父ちゃんに仕込まれた物の方が役に立っている。
「本格的に休憩することに為たのか?」
戻ってきた父ちゃんが、声を掛けてきた。一寸笑っているように見える。ほとんど無表情な顔に、目だけが笑っている。元日本人だったあたしだから、目だけが笑っている状態でも笑いと感じることが出来る。この世界の人間は、口角が上がっていないと笑顔と思わない。
「無理を為ても仕方が無いし。疲れていたら怪我の元になるしね」
あたしの答えを聞くと、馬達に汲んで来た水を飲ませる為に、桶をそっと置いた。そして、馬達に労う様に首筋に手を這わせる。
「食事の準備は、御前が遣れ。水袋を渡せ。汲ん出来てやる」
「判った」
父ちゃんはあたしから、水袋を受け取るとまた林に戻って行く。
お疲れ様です。
読んでくれておりがとう。




