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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ホール村はまだまし 2

「あたし村を出てきたの、失敗だったみたい。リコねーちゃんを信用したのが間違いだったみたい」

と、リタが半泣きになりながら、ぐちぐち言ってきた。

「今はあんたの面倒を見てくれる奇特な人は居ないよ」

「其れは判ってるけどさ。あんな怖い目に遭うとは思わなかった」

 それは解る。あたしもそれについては、同感だけれど今更だと思う。村に居たって、元々村八分状態だったのだから、余裕の無い村の衆に、彼女の養育を期待することが出来ないだろう。基本的にこの世界には、高度な福祉なんて言う概念自体無いのだ。うかうかしていると、人攫いに攫われて、どこかの路地裏で何かを売っているかも知れない。悪くすると、炭鉱で石炭を掘り出すようなことを遣らされる。ぶっちゃけ奴隷落ちである。

 この世界には、奴隷階級という物が存在している。考えようによっては、悪くないことであるけれど。其処には自由は存在しない。人権もありはしないのだ。そして、いったん奴隷になってしまうと、簡単には市民権を取り戻すことができない。先祖代々奴隷の身分なんて言う者も、この世界には居たりする。

 現代日本に生きていた記憶があるあたしには、全く信じられない事だけれど。それがこの乙女ゲームの描かれない世界観だった。何しろ主人公も攻略対象も、貴族並の生活を為ていたのだから。それどころか、王族なんて言う人物すら居たのである。そりゃね、何が悲しくて闇の中を覗きたいなんて思うプレイヤーはいないよね。

「さて、二人とも休憩はこんな物で良いかな」

 父ちゃんがあたしとリタの会話に割って入ってきた。

「あと一踏ん張りしてみようか。もう少し行ったら、わき水が湧いているところがあるから、其処で食事にしよう」

 このあたりもあたしらの猟場には違いないので、森からのわき水が湧いているところはチェック済みである。手軽に上手い水が手に入るのはありがたいことだった。ちなみにその場所は、あまり知られていない秘密の場所だった。


お疲れ様です。

読んでくれてありがとう。


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