ホール村はまだまし
下の村の名前は、ホール村と言う村だ。規模はナーラダ村とほとんど変わらない。主な産業はやはりナーラダ村と同じ、基本的に小麦と野菜の栽培。山で捕れる動物の肉と言ったところか。全く同じだな。
少し領都から離れているので、あそこから流れてくる情報には疎い感じである。最もこれに関しては、目くそ鼻くそって言えるかなとは思う。
森を抜けると広い麦畑が広がっている。収穫期に入っていた麦は、今回の水害でみんな倒されてしまっているけれど、あたしらほどの被害ではなさそうだ。此方の方が高かったって事かな。
やはり目の前の堤防の決壊は、馬鹿に出来ないことなのだろう。最も水害の起こったときから、日数も経っているので、水が引いてきているからそう見えるだけかも知れないけれど。ここから見る限り、水に流されている家は見当たらない。
村の側を流れている運河の堤防は確りしており、どこも、破損しているところを見付けることは出来なかった。まだあたしらは森を抜けたばかりで、村まではまだまだ時間が掛る。ただこの森は、ホール村よりかなり高いのでよく見える。
村からだいぶ離れた処に、第二次救援部隊の車列が向かっている。彼らは何の問題も無く順調に、行程をこなしているみたいである。
あの野犬の群れも、あれだけの数には近づきもしなかったのだろう。そう言う意味では、連中は賢い。あたしは美味しそうに見えたんだろうな。
少し急げば、第二次救援部隊追いつけそうだ。とは言ってもかなりの距離に、成っているけれども。荷馬車と馬車だとせいぜい早歩き程度の移動速度だ。あたし達が出発に時間を食ったとしても、あんな物だろう。
第二次救援部隊が村に到着する前に、合流出来るだろう。此れであたしの契約上のお仕事が出来る。でも、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の身代わりって、今回の状況で意味があるんだろうか。
マリアは誘拐の恐怖から、未だに立ち直っては似ないみたいだけれど。実際あの子が部屋に閉じこもってしまっても、不思議では無いような出来事で。それでも、ナーラダ村では其れなりに遣り取りしていたから、大丈夫じゃ無いかとあたしは思う。
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