野犬の群れ 3
あたしは七匹の野犬に追われながら、何とか馬が暴走しないように祈りながら、駆足をさせている。実際良くこれだけ犬どもに、駆り立てられて暴走しない。さすがに軍馬として、調教されている馬だけのことはある。熟々そう思う。
戦争中に馬が恐慌して暴走するようなら、戦闘に成らないから。騎兵を乗せる馬は、かなり厳しい調教を受けさせられるらしい。其れと比べれば、犬に追いかけ回されるくらいは、どうと言うこともないのかも知れなかった。家の馬で無くて良かったのかも知れないなと、あたしはしみじみと思う。オウルには悪いけれど、こんな事に成ったら、あの子は間違いなく恐慌になって、あたしを振り落として逃げ出したかも知れない。実際あの子はそんな訓練していないしね。基本的に荷馬だし。
吠えながら追いかけてくる野犬の群れは、更に増えてくる。このあたりにこれだけの野犬が居るとは思わなかった。あたし的には泣きたい気分になってくる。落馬すればただでは済まない。其れは考えるまでも無い。
緩いカーブから、直線に差し掛かった時、父ちゃんの指笛が鳴り響いた。其れを合図に乗っている馬に、襲歩に切り替えるように指示を出す。此れまでの走りとは次元の異なる、加速があたしに視界に展開する。とにかく、森の木々が後方に向けて飛ぶように過ぎ去っていく。体感としては、前世のジェットコースター並みのスピード感だ。
あたしの視線の先には、父ちゃんが馬を止めて弓を構えているのが見える。その右手には次の矢が用意されている。
あたしは兎に角真っ直ぐ父ちゃんの方に向かって、馬を走らせる事だけを心がける。流石に犬達も着いてこられないのか、置き去りにすることが出来る。
そのタイミングで、父ちゃんの矢が放たれた。弦が弾かれる音ともに、風切り音があたしの側を通り抜ける。瞬時に犬の悲鳴が上がり。
次の矢がもう放たれた。今度はあたしにも、父ちゃんの矢を放つ動作が見える。何時もの狩りを為ているときのように、無表情にまるで機械のような動きだ。だいぶ離れたところで、又犬の悲鳴が上がる。さすがは父ちゃん。
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