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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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其れなりには乗馬が出来る。4

「うん。解ったわ。あそこが嫌になったら、帰って来るから宜しくね」

 あたしはアガサおばちゃんに応えた。勿論簡単に帰る事など出来ないことは承知している。契約書にサインをしてしまった以上、無かった事には出来無いものなのである。平民は文字をほとんど読むことが出来ない。そして契約書の持っている意味についても、理解していなかったりするのである。

 そういった契約書についての怖さを、賢者様から聞かされていた。前世においても、薄らとだけれど、契約書の怖さを知ってはいた。だから、契約書を熟読しないで、目くら判を押すことは危険なのである。きちんと退職届を書いて、退職しなければならない。最も契約書を読む限り、真面そうな内容だったので、あたしはサインしたのである。

 少なくとも引っかけや落とし穴は、契約書に書かれては居なかった。なにしろ、あたしと父ちゃんは其れなりに読み書きが出来るのだ。ただの平民とは訳が違うのである。

 あたしは、伊達に村長の手伝いを為ていた訳では無いのだ。貴族の書いてくる、複雑な書類の読解についても、賢者様には適わなくても、このあたりを管理している役人並みには出来るようになっていた。

 高校を真面目に出ていなくても、日本の教育水準は、この世界の中に比べるとかなり高いものだったらしい。この国の言葉を身につければ、それ以外は理解するのに、それほど時間を必要としなかった。だからといって、気持ちよくチート出来る訳でも無い。

 今のところ、この世界に来てから身につけた知識の方が、使えるものが多かった。せいぜい使えたのは、父ちゃんの弓制作や村の復旧工事のための、中途半端な雑学の方である。ちなみにどちらも、学校で習った物では無かったりする。

 勿論算数は大変使える。ただ其れも、暗算が出来るわけでも無いあたしは、まともに教育を受けていない、あたしに為ては使える程度だった。村の中ではダントツだけれど、貴族様と比べれば見劣りするかも知れない。

 まあ、比べられる貴族が伯爵夫人やその側近みたいな人だから、見劣りするのも仕方が無いのかも知れないけどね。あたしとしては、マリア・ド・デニム伯爵令嬢はどの程度のことが出来る人なのだろう。少し楽しみでもあった。


お疲れ様です。読んでくれてありがとう。


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