面接
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貴族っぽい馬車の扉が開き、中からマリア・ド・デニム伯爵令嬢が子供っぽいけれど、それなりに良い生地のドレスを着て降りてくる。護衛役と思われる兵士が、恭しくエスコートする。彼は騎士ではなさそうである。
あたしはつけてる装備から、ちゃんとした騎士職では無いことぐらいは見分けることが出来る。父ちゃんはそういったことには詳しかった。しかも、前世の記憶を取り戻すまでにも、教育には熱心だったのである。色々と思惑があったみたい。
何しろあたしは、中身は不良とは言え。普通の平民よりはかなり高度な教育を受けているのだ。この国の平民はほとんどが、読み書きが出来ない。たぶん計算も、足し算引き算が出来ればたいした物だろう。一応あたしは高校中退までは授業を受けているから、それなりには頑張らなくても出来る。言語に関しては、父ちゃんも読み書きは出来るし、村の賢者様も気前よく物を教えてくれたので、村の中では読み書きが出来る方である。
前世の記憶が無い、あたしだったらマリア・ド・デニム伯爵令嬢に入れ替わるのに苦労しただろうな。たとえ掠われた時の衝撃で、こころを病んでしまったと言い訳していたとしても、相当苦しかったんじゃ無いかな。だから、あんなに歪んじゃったんだろう。今回はそうは成らない予定だけどね。
何となく怯えながら、馬車をおりてくるマリア・ド・デニム伯爵令嬢は心なしか涙目になっている。側にいる大人の男を怖がっているみたいである。
次に馬車から、降りてきたのはウェーブをかけた栗毛が印象的な女性だった。少し光沢のある生地のドレスは裕福であることを示している。この人が、あたしの生みの親だと言うことは一目でわかった。ゲームの時よりは、ずいぶん若い。2児の母には見えないだろう。
彼女をエスコートするために、馬車の前にやって来たのはジャスミン・ダーリンさんだった。今回はちゃんと、正式な騎士の格好をしている。あの人文官じゃ無く、騎士様だったんだ。
「美人さんだね」
あたしの後ろから、ニックが声をかけてきた。
「リコにそっくりだ」
ニックがニマニマ嫌らしく笑いながら言った。




