其れなりには乗馬が出来る。
あたし達が借り受けた馬は、戦をするために調教された賢い子だ。父ちゃんが既に飼葉の世話を終えているので、いつでも出かける事が出来る状態である。あたしは革の胴着に、丈夫な布の地本に着替えて、腰にはショートソードを下げた。そして、背には短弓を背負う。
二頭に馬には、鞍が付けられており。鞍の後ろには、旅に必要な物が入れられている袋がくくりつけられている。そして、矢筒が入った袋が馬が走るのに邪魔に成らないように下げられていた。
別に戦争を遣りに行くわけではなかったけれど、道中は決して安全なところばかりではない。危険な野生動物も居るし、時々追いはぎの類いが出たりする。ここは日本とは決定的に違うのだ。其れなりの武装は必須だった。
あたしらに手を出して、無事でいられる訳もないのだけれど。ちいさな追いはぎなら、あたしの小遣い程度には成るかな。
「あんたには此れから、乗馬体験をして貰うんだけど。父ちゃんとあたし、どっちの馬に乗っていきたい」
「リコねーちゃん。あたしはどこかに連れて行かれちゃうのね」
と、リタがあたしを見上げて言った。彼女は今まで、馬なんて言う物に乗ったことはない。貧しい平民の中でも、更に低い位置にいる彼女の世界羽村の中だけなのだ。
たぶん軍馬を見てのは、今回が初めてなおだろう。軍馬の大きさに怖がっているのが、リコにも解る。父ちゃんがかっている馬より大きいのである。かくいうリコも、これだけ大きな馬は見た事がない。
「下の村に行くだけさ。あたしには伯爵令嬢の面倒を見るって言う仕事があるんでね。その序でに、あんたの面倒を見てやろうって話しさ」
「これに乗らなきゃ駄目」
リタがいきなり可愛らしい声を出して、甘えてきた。あまり馬に乗りたくはないのだろう。
「駄目。先行している第二救援部隊に追いつくためには、馬に乗らないと追いつけないんでね。あたしも父ちゃんも、仕事に成んなくなっちまう」
「どうしても乗らなくちゃ行けないんなら、ハーケンさんに乗せて貰いたいです」
リタが、笑ってきっぱり言い切った。あたし的にはだよねー。
ありがとう。




