我儘娘のお願い 4
「その我儘って何を言ってるの?」
アガサが、興味津々と言う表情をしながら聴いてきた。話し好きの彼女が、そのままスルーしてくれるわけも無く。何時ものごとく聴いてくる。
「リタを第二次救援隊の所へ一緒に、連れて行くって言うんだ。俺としては、連れて行くのは反対なんだが、リコは言いだしたら聞かないからな」
「リコちゃんは、あの子のこと特別可愛がっていた訳でもないんだろうに。何でまた」
「村の衆は、今は余裕が全くないだろう。親を亡くして一人に成って、面倒を見てくれる大人が居ないのに気付いたんだと」
「でも村長は、ちゃんと配給を渡していたはずだけど。芋の煮物ばかりで飽きるだろうけどね」
アガサが、視線を村長の屋敷の方に向けた。今、村の女衆達は炊き出しを村長の屋敷の庭で作っている。でかい大鍋で、芋を煮ているのである。毎日芋ばかりではあるけれど、まだ食うことが出来るだけましだ。
村長の屋敷には、小さな石窯はあるけれど、村の衆に行き渡るほどパンを焼く事は出来ない。動物を狩ることは出来るけれど、その肉も村の衆に行き渡らせられるほどは捕れないだろう。そうなると、最も手頃なのは土室に保存していた野菜の類いを使うことになる。つまり芋の煮物と言うことになる。しかも味付けは塩だけと言うことになった。
「リコは言いだしたら聞かないから、気の済むようにしてやろうかと思う。本当は、村に居た方が楽だとは思うんだが。少なくとも、飯を食うのはこの村の方がましだろう」
「だろうね。下の村がどうなっているのか解らないけれど。ここより酷いことに成ってるかも知れないしね」
家の娘は、言いだしたら聞かない。実際、マリア・ド・デニム伯爵令嬢をにしたって、リコが言い出したことだ。しかも襲撃時期と場所を、ピンポイントで指摘しやがった。双子だから解るのかも知れないと思って、半信半疑で言うことを聞いたのだが。真逆、本当に誘拐事件が起ころうとは思いもよらなかった。
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