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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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けだるい夕暮れ

 ガルバドス家の馬車のタラップを踏みしめ、目の前で微笑みながら、あたしの手を取るエンデ・ガルバドス君の顔を眺める。貴族の作法道理の所作は、結構慣れているのかも知れない。確かに歳の割には、女性をエスコートする姿が様に成っている。


 悪い男ではないって事が分かった事は、今日一日の収穫だろうか。あたしが、勇気を出して、彼に話した事を半信半疑とはいえ。確かめようと考えさせる事だけは成功した。つまり、信じるまでには至らなかったって事だ。それでも、全く考えていないよりはましだろう。


 きっとガルバドス家にだって、リントンさんの影の人達の様な者がいるだろうし。規模はともかく、全く居ないって事もないと思うのね。でなかったら、こういう国境の領地を管理なんかできないと思うから。


 いち早く情報を得ることは、どんな時だって、大切な事だと思うしね。もっとも、乙女ゲームというよりは、戦略シュミレーションゲーム的な発想かも知れないけれどもね。これでも、戦国シュミレーションゲームもやっていたからさ。そういった発想もあるのよね。


 ああいったゲームだと、俯瞰して状況が分かるけれど。現実に生きていると、それこそ少し離れてしまえば、その先で何が行われているか分からない。分からない以上、本当に気を付けていないととんでもない事に成るからね。今のあたし達には、神様の目のような高い視点からの、リアルタイムでの情報入って来ないから。


 つくづくお茶の間に居ながら、地球の裏側で起きている事が分かるなんて事は、此処の人たちにとっては想像の出来無い事なんだ。すでに帝国側は、侵略戦争第二段に取り掛かっている。たぶんそうだ。


 あの乙女ゲームで描かれていた、あのエピソードは戦争が起こる前の一時を切り取っただけの事で。悪役令嬢マリアさえ居なければ、ああいった事が起こらない訳ではなくて。いようがいまいが、帝国の侵略の意志は全く変わらなかったのかもしれない。


 あたしはマリアさえ助ければ、あの酷い悲劇は起こらないと思って居た。それは大きな間違いだったのかもしれない。

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