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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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食事会は踊る 8

 あたしの言葉を、エンデ・ガルバドス君はいぶかしげな表情で聞いてくれている。鼻から無視することもなく、あたしの聞く人によっては与太話でしか無い事を、取り合えず大人しく聞いてから、判断しようとしてくれている。それだけで、それなりに頭の良い人なんだってわかる。残念な事は、ちょっとあたしのタイプでは何のよね。


「領都ベレタの端に対する工作は、帝国の調略の一環ではないかと考えていますの。そして、先代のおじい様がなくなった事にも、絡んでいるのかもしれないって思って居ますわ」

「確かに何者かが、橋の柱を傷付けたのは判る。だから、それが帝国の調略だって言うのは、あまりにも突拍子の無い話ではないだろうか」


 あたしの小さな声に合わせて、彼も言葉を小さくしてくれている。そのせいか、彼の顔が思いのほか近くなってきた。正直、テーブルマナーとしてはどうなんだろう。それをあたしが、言えた立場でも無いのだけれど。


「そうね。今のところ、確証は得られていないわね。私もあそこの帳簿や使用人の活動報告を読んでみたのだけれど。残念ながら、マッキントッシュ卿に帝国の代理人が、接触した形跡を見つけられなかったわ。帝国側の動きが把握できてもいないのよ」

「...」

「ごめんなさい。私には確証も証拠となるものも、持ち合わせていない。だからと言って、此のまま黙って帰ってしまう事も出来ない。だから、気を付けていてほしいの。此のまま、マッキントッシュ卿を放置していると、あなたたちが孤立してしまうかもしれないわ」


 あたしの頭の出来の悪さに、嫌に成りながらも言葉を続ける。相手は貴族の、きちんとした教育を受けている御曹司だ。その人を、信じさせるだけの材料もないまま。こうして話している、自覚はある。それでも、彼には信じて動いてもらいたいと思って居る。


 二年後には、ガルバドス家の人達はもとより。多くの人たちの命が危険に晒される。少なくとも、この人は確実に、首だけに成る。こうして、話して行為を感じる事が出来る相手には、生きていてほしいと思ってしまう。


 タイプでは無いけれど。マリアの事が好きだってことは判るから。一生懸命に生きている人でもあるし、好感は持てるのよね。ぶっちゃけ嫌いじゃない。昔のあたしなら、お金次第で、一晩くらいは添い寝してあげても良いかも知れない。もちろん、顔には出さないけどね。


 あたしは帰ったら、マリアに彼の事を聞いてみようと、心のなかでメモを取っておく。本当に、聞くかどうかは判らないんだけれど。今はそんな気分になった。


「とにかく、私の話を聞いて、少しでも心に留めて置いて欲しいのよ。あの新任の領主は、色々と可笑しなことを始めているから、気にして置いて欲しいの。そして、出来るだけ卿が孤立しないように、気を配っておいて」


 あたしの考えでは、あいつらは領都ガルバを孤立させようとしている。そのために、マッキントッシュ卿の立場を悪くする。そうすることで、領都ベレタからの援軍が期待できなくする。実際、ベレタの私兵たちはびっくりするくらい弱体化していた。


 数は多くても、じいちゃんの頃の強さも忠誠心も感じられない。あれじゃ、もし何かあった時、あいつらが領民に対して酷い事を仕出かしそうな気がするくらいだ。


 



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