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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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公務と書いてデートと読む 10

 賑やかな通りのみの視察だけれど、それでも街自体がそれほど大きくもないから。街の様子は一瞥するだけでも、把握できてしまいそうだ。ベレタと違い受任の数が少ないおかげで、整備も行き届いている。それでも、貧富の差は感じられるけれど。露骨なほど感じられない。

 路地裏から、こちらを覗いている子供は見かけないし。もちろん、大人の娯楽に相当するお店は、全く無い訳ではないけれど。それほど胡散臭くも感じない。

 エンデ・ガルバドス君はがエスコートしている以上。不都合な物は見せないようにしているのかもしれない。その可能性は大いにあるにしても、ここガルバの住人は楽しそうでもあり。生きにくくは感じてもいないのだろう。

 視察の道順はあらかじめ決められてい居る。そうでないと、護衛を務める兵隊さんが困ってしまうからだ。あたしたち視察団が、いるだけで町の人たちの生活を邪魔している。それは判っているのだけれど。これも一つの仕事だから勘弁してほしいと、内心思いながら。こちらを珍しそうに眺めている人たちの中に向けた。その時、見知った人の顔に気が付いた。商人のコルが、あたしにウインクをしている。

 リントンさんの影の人たちも、あたしを追ってこちらまで来ていたんだろう。さすがに、この小さな街でああいった店を拠点にはしていないだろうけれど。何しろ、この領都にはあの手のお店は一軒しかなかったのだから。

 本来ならば、ここにスパイの拠点がいるとは思うのだけれど。防衛のためだし。これもリントンさんに相談してみよう。てか、ここにも拠点があるんじゃないかな。あのタイプの拠点とは思えないけれども。少し期待してもいいのかもしれない。


「この町は洪水の被害は、どの程度だったのですか」


 あたしは判り切った事を、あえて確認してみる。あたしがここに来る前に、ジェシカ・ハウスマンさんに読まされた資料の中に、この領都が受けた被害状況もあった。あえて言うなら、人的被害は皆無と言って良い。

 どちらかと言えば、この町は水害の範囲に入っていない。ただ、領地に点在する小さな村が、いくつか被害にあい。それを救援するために、かなりの資金を投入してしまっていた。

 

「この領都に関しては、報告書に書いてある通りそれほど大きな被害は受けていない。ただ、運河沿いにあった村が流されてしまっている。その復旧に関しては、あまり進んでいない」

「領民の被害はいかがですか」

「十数人が行方不明になっている」

「残された遺族の安否は判っていますか」

「そういう事に関しては、僕は把握していないんだ」


 彼の話を聞けば聞くほど、あたしは頭が痛くなってきた。マッキントッシュ卿ののやり様と比べれば、かなりましではあるのだけれど。あれから、ずいぶん経っているにもかかわらず。全く何をしているのだろうか。

 この邦の形としては、地方領主の権限が、かなり大きくなっている。いわば、領主が支配している領地のなかでは、すべてを決める権力を持っている。だから、それぞれの地方で独特の執政が行われているんだ。

 たとえ、奥様といえど、地方領主に言うことを聞かせるほどの力はない。デニム家が、伯爵位に押し込められている以上。お金による支援や、交渉でいう事を聞かせなければならい。



 

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