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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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公務と書いてデートと読む 9

 町の住民の前で、あたしはエンデ・ガルバドス君のエスコートの手を支えにして、扉の前に用意されたタラップに足をかける。普段使いの靴と違い見た目重視のヒールが高い靴は、あたしの自由をかなり制限してくれる。

 こういった身の回りの物のせいで、貴族女性が嫋やかにして居なければ成らない。これが、本来の理由なのかもしれないなって思う。そういえば、どこかの国の習慣で、纏足なんて習慣があるって聞いた事があったっけ。あれも、女性が逃げられないようにするためなんじゃないかって思ったな。

 この足元のヒールは、結構な武器にもなるから、考えようかもしれないけれどもね。今日のあたしは、いつもの鎖もないし。ちょっと心細い状態にもなっている。

 マリアに借りた絹のドレスを着ているのだけれど。どこにもポケットらしいものがないうえに、なんとコルセットが必要で。かなり動きが制限される。どのみち、このドレスを着たまま立ち回りなんかできない。普段来ている、メイド服がどれ程着やすいかが分かる。

 さすがに、この街中で可笑しな事なんか起こり様が無いだろうけれどもね。護衛は結構いるし。

 ガルバドス家の人達は、たぶん悪政なんかしていないだろうから、心配はないとジェシカ・ハウスマンさんが言っていた。

 街行く人たちが足を止めて、あたしの顔に視線を向けてくる。そして、ざわざわと話し声が、聞こえてくる。中には、坊ちゃんのいい人なんて、頓珍漢なことを言っている、話し声も、混ざって聞こえてきた。

 もしかして、マリアとそういう関係なのかもしれないけれど。あたしとは、全く関係もなくて、それどころか会ったばかりなんですけど。

 声を大きくして言いたいと思う。そんなこと叫ぶわけにもいかないから、取り合えず随分練習した微笑みを浮かべてみる。

 どこからともなく、かわいいななんて声も交じって聞こえる。一寸だけ、うれしいような気がした。

 初めてこの領都に来たけれど。どことなく見覚えがあるような気がする。それどころか、二階の窓からのぞいている、子供の顔にも見覚えがあるような気がする。

 間違いなく、この町は乙女ゲームさくら色の君に・・・のスチルにあった、町に違いない。あのスチルは悲惨なものだったけれど。今は実に平和な様子だ。

 二年後には、この平和は壊れてしまう。其れを、壊したくはない。そう思っていても、今のあたしには何もできる事が無い。せいぜいガルバドス家に頑張ってくれるように話す事くらいだ。


「ガルバドス家の方々は、領民を大事にしているのですね」

「それは当然の事です」


 半ば緊張した声で、エンデ・ガルバドス君はあたしの言葉に答えた。

 何より、街路上にウンチが投げ出されていないだけで、それなりにお金を投下しているのが分かる。町を清潔に保つだけで、かなりの労力を必要としている。この世界では、町の衆の教育水準はかなり低い。町の景観を保つことだけでも、そういう汚れ仕事をする人間が必要となる。

 あたしが見る限り、家を持たない子供を見る事が無い。其れだけ良い政策をしている証拠だ。これに関しては、普段の様子を知る人間に聞かなければいけないだろうか。

 前世の事だけれど、えらいさんが町の視察に訪れる時に、街をきれいに整えて、見せられない汚い部分を隠すようにしているなんてこともあったからね。

 この間も、あっちの領都でかなり大規模に、隠そうとしてるのには気づいているんだ。

 あっちには、リントンさんの影の支所が在ったから、恥部を隠そうとしても、もろばれに成るんだけれどね。この町に関しては、あたしの視察は急遽だったから、そうそう隠せる事でもないと思う。町の様子は信じてもいいのかもしれない。





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