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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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公務と書いてデートと読む 7

 結局あたしの対面には、ジェシカ・ハウスマンさんが座り。その隣には、護衛兼侍従の青年が座った。少し浅黒い容姿のイケメンである。好みでいうと、彼の方がタイプかもしれない。

 いい所のお坊ちゃまを思わせる、エンデ・ガルバドス君よりも、下級爵位の五男である、彼みたいな人が好きなのよね。年齢的には、だいぶ年上だから、今のところは無理かもしれないけれど。中の人であるあたしの年齢を加えると、ずっと年上になっちゃう。 

 見た目的には、あたしの方がかなり、年下に成っちゃうんだけれどもね。転生者にとっては、この辺り難しい。今のところ、恋愛したいなんて願望もないから、何の問題もないんだけれども。なんせ、昔のあたしは男運が非常に悪かったからさ。乙女ゲームに夢中になってた頃が、一番幸せだったかもしれない。

 ガルバドスの砦から。馬車に揺られること小一時間。お互いに共通の話題に困りながらも、それでも天使が通るような、沈黙を作ることもなく乗り越える事が出来た。こんな自分を、後でほめてあげたいと思う。本音を言うと、お酒が飲みたい。

 子供だからと言って、お酒を飲んではいけないなんて決まりなんか無いのだけれど。水で薄めたような、ワインなら飲んでも酔っぱらったりしない。あれは、あたしの中で酒の分類に入らないからね。

 この辺りは、水がそんなに飲料として適さないから、煮沸して飲んだり。水で薄めたワインやエールを飲むようになっているに過ぎないんだ。

 混ぜ物がない、お酒はおいしいとは思うけれど。まだ体が出来ていない、あたしみたいな少女が飲むものでもない。ちなみに、下町に行けば結構そういった物を飲む習慣を持っている、女の子がいたりする。個人的には、結構やばいとは思うけれど。だからと言っておせっかいに口も出せないから、見ているだけしかできないんだ。

 あたしは昔、あっちで結構痛い目にも合っているから。せっかく転生して、奇麗な体に生まれ変わっているのに、もったいないから気を付けることにしている。

 こっちでのあたしは、かなり健康優良児的に生活をしていたりする。父ちゃんの小隊の連中との賭け事は、そんなに責められるような事でもないから、何の問題もないと思っている。何より、健康に悪いわけでもないしね。

 賭けに入れあげて、身を亡ぼすような事はまずないしね。半分は、いわば自己鍛錬の一環でもあるし。父ちゃんも何も言わないから、問題はないと思っている。

 エンデ・ガルバドス君の隣に座った、側仕えの彼があたしの視線に気が付いて、困ったような微笑みを浮かべた。

 この人は、ガルバドス君の従者をしている。ペーター・ウイルヘルムって言ったと思う。此のところ、いろんな人に会っていたから、なかなか顔と名前が覚えきれない。できれば、名刺を用意して欲しい。

 無理な相談なのは重々わかってる。何しろ、身近なところに紙がそれほどないし。意外に高いものだから。何しろ印刷技術もありはしないし。本の類なんか、基本的に手書きが主だからね。

 つくづく賢者様のコレクションが、流されてしまったのが惜しまれる。あれはあれで、相当な財産だったと思うのよね。


「領都ガルバへは、それほど時間がかからない。少しの間、辛抱していてほしい」


 エンデ・ガルバドス君が、そんな事を言ってくる。ガルバドス家の砦は、比較的高い山の中腹に建っているから。あたしたちは、領都によらずに直接砦の方に向かった。そのおかげで、あたしたちは領都の様子を見ていなかった。それで、あたしは相談というお願いをした。

 それが原因で、視察の名目の公務をする事に成った。もしかしなくても、伯爵の思惑が大いに関係しているのだろう。何しろ、マリアの奴は世が世なら、マルーンの王女様だったのだから。



 

 


 


 

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