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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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公務と書いてデートと読む 2

 実に気の向かない公務が今日のミッションだ。公務自体はそれほど難しいことではない。デニム家からの金銭の受け渡しは、既に行われているから、ほぼ目的は果たしてしまっているし。それ以上の難しいことは、ジェシカ・ハウスマンさんが請け負ってくれている。

 本来なら、レイの奴がそれをするのが順当なんだけれど。彼は正式な文官でもないし。所謂なんちゃって文官だから、そこのところは教育を受けている、ジェシカ・ハウスマンさんの仕事になる。どのみち、彼はあたしのために、別行動しているしね。

 あの家族を送っていった、部隊いまだに合流していない。本来なら、既に合流していてもおかしくないのだけれど。それほど多くの護衛を付けていないから、少し心配だけれど。それほど危険のない道程のはずで、せいぜい山犬が出るくらい。


「リコ、何か心配でもあるの。昨夜は眠れなかったみたいだけれどガルバドス家の嫡男様なのでしょう」

「そうなんだけれど。化粧はそんなにしたくはないな」

メイドのサリーさんは、あたしがなんちゃってマリアだってことを知っている一人だ。つまり新米メイドの癖に、お嬢様のようなまねごとをさせられているってことを知っていてくれている。普段は、一応の設定を守って、マリアに対するように接してくれているのだけれど。心配そうな声音が混じっている。

 よほど酷い顔をしているんだろう。さすがはベテランメイドってところかな。


「化粧をいたしましょうか」

「それはいいわ。本当に嫌いなのよ。それに、マリアも化粧なんかしないでしょ」

「それはそうですが、あなたの顔は、かなり程いわよ。今日、お会いするのはマリア様のことが好きなお方でしょう」


「せめて、目元を温めていきましょうね。このままでは、マリア様の好感度が下がってしまいますわよ」


 其れは判る。マリアの代わりに来ているとはいえ、彼女の評判が落ちるのはまずい気がするからね。それでも、彼女は化粧はあんまりしない人だし。其れも、あたしが彼女に化粧の怖さを吹き込んだからなんだけれどもね。

 意外に彼女は、あたしのいう事を信じてくれる。結構素直で、かわいいところのあるお嬢様なんだ。今のところ、あたしの身の回りにいる人たちに、化粧による、鉛や水銀の中毒の症状が出ている人は見かけないけれど。いずれは何とかしておきたいとは思う。

 あたしの知っていることが起こるのなら、そんなこと気にするほどのことでも無いのだけれど。何しろ帝国の蛮族たちが、やってきたらそれどころではなくなくなるのだから。みんな殺されてしまう。

 それまでに、あたしは村の衆が逃げ出せるように根回しを終える積りだけれど。帝国が侵略できないようにする方が良いのは、分かっていても。実際にどうする方が良いのかは判らないんだ。

 そういったことは、どこかの天才軍師みたいな人の仕事だと思う。あたしは普通の勉強嫌いの不良でしかない。一応、父ちゃんに仕込まれたから、父ちゃんの小隊相手に、結構えげつない勝ち方もできるけれど。あれは模擬線で、夜戦だったからだ。しかも、ほとんど視界の悪い森の中での話だ。暗視ができるアドバンテージは、結構チートなのよね

 あたしが考え事をしている間に、新しく部屋に入ってきた、クリス・バートランドさんに温かい濡れタオルを、持ってきてくれるようにお願いしていた。クリスは要領よく、サリーさんの補佐に収まってしまったいた。なんだかんだ言っても、彼女はスパイの一人でもあるから、誰かの懐にするりと、入り込むことができるみたい。


 


 


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