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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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公務と書いてデートと読む

 サリーさんの仕事は手早く、それでいて丁寧だ。そのあたりは朝の仕事のルーティーンに組み込まれているから、それほど驚くことはないけれど。あたしと比べると、同じ動きなのに、どこか気品があったりする。動きはゆっくりに見えるけれど、やる事は木賃とこなしている。さすがだ。

 すっぽんぽんで寝ていたあたしを、少なくとも人の目に触れても問題の無いように、仕上げてしまった。あたしもマリアの面倒を見ていつのだけれど。あたしのそれよりも、時間がかかっていないんじゃないかって思う。なんであたしみたいな、新米メイドがマリアの専属メイドなんかに成っているのか、ちょっと申し訳ないくらいだ。

 あたしが彼女の命の恩人で、顔がそっくりだったから、一番近くでお仕えできる立場にしたらしいのだけれど。こちらとしても、そのあたりはありがたかったから、乗っかったんだけれどね。

 悪役令嬢マリアが王都で起こす、あれやこれやが気になって、できれば一緒に行きたいとも思っていたから、専属の言葉につられたんだ。普通に考えれば、メイドの仕事としては、下っ端のお仕事をしている立場なんだよね。

 ただ、こうして状況が見えてくると、のんきに王都に行っても居られないのかもしれない。マルーンが侵略されるのは、悪役令嬢マリアが学園に入学してから、約一年たってからだから。再来年っていう事になる。

 それとは別に、そう簡単に帝国が戦争を始められないようにしないといけない。この世界の戦争は、一度にどれだけの数を戦争に入れることができるかで決まるらしい。数をカバーするのが、それまでの戦略って事に成るだろうから。昔遊んでいた、戦国物のゲーム的なことが当てはめることができるんだろう。

 それからすると、帝国が細かくちょっかいを出しているのは、そういう状況を作るためにやっているんだろう。いわゆる忍者コマンドを使っているってわけだ。


「お嬢様。御髪を整えますね」


 マリアが普段使いにしている、軽装のワンピースに着替えると、あたしを華奢な造りの椅子に座らせて、最近伸ばしている髪を梳きだす。これまでのショートヘアと違い、どことなくお上品に見えるから不思議だ。

 あたしが考え事をしている間に、どこから見ても、マリア・ド・デニムが出来上がってくる。それでも、化粧っ気がないのがご愛敬だろうか。あれはあんまり好きじゃない。何より、まだ十三歳の少女なのだから。肌だって全然きれいなのだから。それに、これは思い込みかもしれないのだけれど。このお化粧に、水銀が使われていないとも限らないからね。

 本当はこんなことにも、気を付けたいとは思う。実際のところは判らないのだけれど。この世界が、あたしの知っている世界と似通っているのか、それともそうでないのか。わからないから、もしかするとあたしの知ってい事が当てはめられないかもしれない。少なくとも、国の形は全く違うから、そのあたりは違うのだろうけれどもね。

 わかっていることといえば、少なくともこの世界が、デジタル的な世界ではないってことは判っている。ステイタスオープンって言っても、ステイタスが見えたりしなかったからね。


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