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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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長い夜 4

 ため息が漏れだす。

 あたしの考えが足りなかった。悪役令嬢マリアが引き起こす事を無かった事にしても、マルーンで起こる悲劇は無くならない。あくまでも、あの王都での出来事は、大きな流れの中の小さなエピソードに過ぎないのだから。

 これはあたしの妄想だけれど。さくら色の君に・・・の作者はこの異世界の出来事を、何らかの方法で垣間見ていて、その中の乙女ゲームにできそうな場面を描いたんじゃないかって思う。

 なんであたしがナーラダのリコに転生しているのかは、ちょっと訳が分からないのだけれど。このままだと、あたしの大事な人たちも、もろともひき潰されてしまう。

 話をして、みんなを逃がすことも考えたのだけれど。恐らく説得なんかできないだろう。何より、みんなには大事な生活がある。もちろん、今すぐ侵略者の軍隊が向かってくるのが分かったら、いうことを聞いてくれるだろうけれども。

 そういったことは判り切っている。今のあたしにはそれだけの力はない。何しろあたしは、ナーラダ村の端っこに住み着いた、猟師の娘でしかないのだから。

 この邦の支配者である、奥様ならそれなりの権力を持っているから、領民を動かすこともできるだろうけれど。なんちゃってマリアでしかないあたしが、何を言っても動かせない。あのマリア・ド・デニム本人でも、そんな大それた権力なんか持ってはいない。単なる令嬢に祭りごとに口を出す権限なんかありはしないのだから。

 相談することのできる人間は、あたしの側にはいない。サリーさんは論外だろうし。ジェシカ・ハウスマンは、話なんか聞いてはくれないだろう。何しろ彼奴はあたしが変なことしないように、見張っている侍女なのだから。

 結構変な事をしているけれど。あまり政治的なことに首を突っ込まないから、口を出してこないのかもしれないしね。

 レイの奴は、いまだに合流できないでいるから。話を聞いてもらうこともできないし。元王族だから、そういったことも教育を受けているって、あたしの方で勝手に思っているんだけれど。何しろ何でもできる、スーパー側仕えをしていたからね。彼がいたから、悪役令嬢マリアがいろいろと暗躍できたみたいなんだよね。

 ただ、あたしのことを信頼できないでいるらしく。彼は、平民にしては上品だけど、あまり教育をされていない少年を演じている。

 あまり優秀なところを見せると、父ちゃんの小隊から引き抜かれて、マリアの側仕えにされてしまうかもしれないからね。あっちに行けば、もしかするとあの怪物君に、出くわすかもしれないのだから。 

 決断しなければいけない。其れは判っているんだ。一人で決めて、だれの責任でもない。あたしの責任で、これからの事を決めなければならない。

 寝室の扉がノックされた。サリーさんが起こしに来たのだろう。


「おはようございます。今日もいい天気ですよ」


 天蓋の幕の向こうから、サリーさんの足音が聞こえる。ベテランメイドの鏡のような彼女は、黙っていれば侍女に見えるほど、落ち着いてそれでいて仕事ができそうなんだ。実際仕事ができるんだけれどね。

 この人になら、相談できるような気がするんだけれど。これから起こることについて、話していいものか悩ましい。

 


 

 

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