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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ある意味聖地巡礼 9

 内心の動揺を悟らせないように、そしてこの純真な少年を傷つけないように、もしもマリアの気持ちがこの子にあったなら、其れをぶっ壊したりしないように、気を付けなければならない気がする。本当にどうしよう。

 中の人であるあたしは、結構修羅場を経験している。その経験の中に、こう言ったピュアな経験は無い。どちらかというといわゆる不純な異性との遊びだ。あたしも結構な屑だったから、そう言った打算と欲求からの関係。それなら、付き合い方を知っている。其れが目の前に立っている、真剣な表情をしている男の子の経験は無い。たぶんこの子は童貞さんだろうし。今のあたしも処女様なんだけれどもね。

 浮き足立ってしまう感じだ。だって妹の思い人かも知れ無い相手だし、あんまり無碍にも出来ない。此所で振ってしまっても良いけれど。其れだと、マリアに嫌われてしまうかも知れ無いし。

 あたしのタイプじゃないから、お付合いはしたいとも思わないけれど。マリアの気持ちが分らない。正直、小隊の連中相手に模擬戦を遣っていた方がずっと気楽だ。

 頭の中はこの窮地を回避する方法を模索しながら、階段を登ることに専念をすることにする。なにか色々と話しかけてくるけれど、あたしの答えは小さく頷くだけに止めるしかなかった。たぶんエンデ・ガルバドス君は焦っても居るのだろう。あたしが黙り込んでしまったから。

 あたしをエスコートしてくれている、掌が少し汗ばんでいる。かなり焦っているんだろうな。彼も少年でしかないのだから。その表情からは、嫌われたのではないかって、思っているのが丸わかりな顔をしていた。其れは当然だと思う。ずっと幼い頃から、想っていた人に嫌われたと思えば、表情だって変わってしまうだろう。

 此所が乙女ゲームさくらいろのきみに・・・の舞台に近い世界だって事は、知っているけれど。こんな処に思いもよらない、イベントが待ち受けているとは思わなかった。其れもマリアの過去に幼い恋の物語があるとはね。端で見ているのは、ご褒美なんだけれども。当事者になるのは勘弁して貰いたい。

 貴族令息としては、結構情けないぞ。確りして貰いたい。そんなことでは、此れから起こる大変なことを乗り越えられないだろう。本来は色恋にうつつを抜かしている暇なんか無いのだから。

 そんなことをぐだぐだと考えている内に、この砦の堅牢な城壁の上に到着してしまった。スチルに有った多くの敵兵を見下ろす、アリス・ド・デニム伯爵夫人が立っていた場所だ。

 そうしてこんなにそっくりに描けるのか、訳が解らないのだけれど。城壁の上から見下ろす光景はスチルそのものだった。敵兵や、攻城兵器が見られないだけだ。

 今はのどかな風景が広がっている。小麦畑が広がっており。農作業をしている人影が見えるだけだ。こう言った眺めは、とても平和な感じがして、これが壊されなければ良いと思ってしまった。

 

 一寸したトラブル継続中。正直しんどい。


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