ちょっとの善意 (余計なお世話)3
父ちゃんがため息をつきながら、あたしの肩に手を乗せて言った。その大きくてごつい手が、載せられた処が痛い。
「安い同情で面倒を見てやれるほど、おまえには余裕はないと思うがな」
「このまま放って置いたら、この子どうなっちゃうか解らないし。村の衆はいい人達ばかりだけど。今はあたしより余裕が無いだろうから、この子の面倒は無理かなって思う」
「リコねーちゃん。全然大丈夫だから、あたしのことは気にしないで」
リタが、あたしの手をぎゅっと強く握りしめていった。彼女のかをは話の内容を察しているように見える。
「猫の子を拾うわけでは、無いと言う事は判っているのか?」
父ちゃんが膝を折って、あたしの顔を覗き込んできた。最近、こうしてあたしの話を聴いてくれるようになってきた。此れも賢者様に意見されていたのを覚えている。以前は話なんか聴いてくれない人だった。
「うん。解ってる。ちゃんと面倒を見るようにするよ」
「まあ。ニックの奴が命がけで助けた子供だ」
父ちゃんは膝を突いたまま、リタの方に視線を向けた。珍しく一寸微笑んでいる。あたしは明日雨になるんじゃないかと思って、空を見上げた。少し黒い雲が此方に流れてくるのが見える。
「おまえ達は、ここで馬の世話をして待っていろ。俺は村長に話がある。出かけるのはそれからだ」
そう言うと、父ちゃんが立ち上がった。
「アガサが弁当を持ってきてくれるそうだ。弁当を一つ追加してくれるように頼んで来る」
父ちゃんは、踵を返して村長の屋敷に向かってる来だした。村長の屋敷に向かって歩き出した。その背中は気のせいか笑っているように見える。
此れはあたしの我儘だ。其れも特大の物だろう。昔の父ちゃんだったら聴いてはくれなかったろう。小突かれて終わりだ。
いちいち、餓鬼の戯言を聞いては居られないだろう。脳みそ筋肉の人なのだから。
異世界恋愛にはまだなりません。
読んでくれてありがとう。




