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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ある意味聖地巡礼 3

 小一時間を使って、あたしはお支度って奴を、三人がかりで施された。気楽な格好から、其れなりに見られるドレスに着替えさせられて、黒髪を梳られて、可愛らしい編み込みを施され、仕上げに薄化粧をされている。


 普段のマリアがよくしている格好だ。成るべく似させているのだから、この辺りは当然だけれど。未だコルセットは早いんで、使われていないから、楽に息が出来る。


「上手く付き合ってくださいね。ガルバドス家は奥様にとって、重要な方々ですので。お嫁入りの選択肢には、入らないでしょうが、エンデ様との交流は重要ですから」


 あたしの背中を、ジェシカ・ハウスマンさんがそっと押ながら、他の人達には聞こえないように、言葉を掛けてくる。あたしはそう言った令嬢教育はされていないんですけど。これまで通りの付き合い方で良ければ、其れなりに出来る。嫌われないように、だからと言って惚れられないようにする。


 良いんだけれどさぁ。令嬢の結婚なんて、政略結婚が常識でしょ。確かに、ガルバドス家は国境を守る貴族の一人で、重要だとは思う。マリアの奴がお嫁に行くようなことは無いだろうけれど。仲良くしておく必要があるのは知っているわ。


「判っているわよ。この御貴族様は、マルーン邦を守る要の一つなんでしょ」

と、ハウスマンさんに答える。


「頑張ってね。期待しているわ。貴女の本来の仕事なんだから、確りやってきなさいね」


 ハウスマンさんの掌が、あたしの背中を軽く叩く。彼女の手のひらは、意外でも何でも無く、結構痛かったりする。力と言うより、スナップが利いているからだ。


「痛った」


 あたしが振り向くと、何故かいい顔をした、ハウスマンさんが、サムズアップをしていた。後方には、サリーさんとバートランドさんが、二人そろって行ってらっしゃいと言っている。他の人の目が有るから、彼女達の仕草は当然か。ハウスマンさんの遣り様は、侍女としては可笑しいんじゃ無いだろうか。後で、奥様に言いつけてやる。


 取りあえず御嬢様モードの歩き方で、もたもたしながら、貴賓室の扉に近付くと、お迎えに来ていた侍従の少年が、すっと扉を開いてくれた。この人この部屋での、あたし達の遣り取りの一部始終を見ていたんだよね。驚くことに、彼はとんでもなく存在感が無い。動かなければ、置物のように見えていたかも知れない。


「スミス、御嬢様を宜しくね」


 この侍従の少年に、ハウスマンさんが声を掛けた。


 あたしは思う。他の家の人に、あたしの事をお願いするんで無く。ハウスマンさんが付いて来てくれれば良いと思うのね。護衛にうちの兵隊を寄越せとは言わないからさ。うちの連中を、他家の中を歩かせるのは不都合だってのは、判るけどさ。


 あたしが伯爵家嫡男相手に、粗相をしないとも限らないのに。信頼してくれているのは判るから、可笑しな事をするつもりも無いけれど。まるで乙女ゲームの一エピソードみたいなイベントは苦手だわ。


 正直、森の中で飛んでくる矢を、避けていた方が気が楽だ。彼奴らみたいに連中の腕なら、先ず当たったりしないから。気楽だったんだよね。


「お待たせしました。其れでは参りましょうか」


 簡易なコーツイを、この侍従の少年に向けて遣ってみせると、慌てて少年も挨拶を返してくれる。お互いに敵意は無いよって、示しているだけだから、あんまり良いもんでもないだけれどね。





 

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