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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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カテーナ領主夫婦 11

 エンデ・ガルバドス君は言葉を飲み込むような、仕草をした。あたしはなにか不都合な質問をしただろうか。ここへ来る前に、ガルバドス伯爵家の家族の資料は読んであるけれど。これは家族構成に対する報告書で、ごくプライベートな事までは書かれていなかった。


 ジェシカ・ハウスマンさんが、その辺りの事情に関して、知ってるだろうけれど。其れをあたしに教える必要を感じなかったのだろう。こういった事は直接尋ねる方が、気持ち的にも良いからね。初めましての人達に、尋ねるのは何かと不味いかも知れ無いけれど。


「此奴は少し事情があって、休学中だ。学業に関しては、こっちでも学ぶことも出来るし。元々、領主を継ぐ立場としては、彼処の言ったところで、其れほど益の有る物でも無いから。もう暫く療養という名目で、此方で領主業を学ばせようと、思っている。その辺りは、姫様には内緒にしておいてくれな」


 苦笑を浮かべて、ガルバドス卿が説明してくれる。病気療養なのか、なにか不都合なことがあったのか。話の内容からは、判らなかったけれど。兎に角事情があって、学園を休学しているって事だけは理解した。


 地方領主としては、嫡男を人質に取られるような物だ。其れは成るべく避けたいのは判るからね。あたし的にも、別の話に持っていかなければならない。だからと言って、マッキントッシュ卿の可笑しな動きについて、この場で話すことでも無い。


 何しろ晩餐の場所には、給仕を含めた使用人が、三人も居るのだから。ましてや、あたしより年下の子供だって居るし。 食事は楽しく和気藹々とするのが、美味しく頂くこつだしね。


 取りあえずワインが注がれている、金属のカップに、口を付ける。少し酸味のあるワイン独特の味が、口の中に広がる。どちらかというと、あたしは水を入れられたワインか、エールの方が飲み慣れている。美味しいワインなんだろうけれど。一寸好きには成れないかな。


 態々取り寄せてくれた、ワインなんだけれど。この一杯のお酒で十分かな。一応未成年でもあるし、この国では飲酒を制限されていないけれど。だからと言って、こう言う席で酔っ払ってしまうのも憚られるから。気を付けて飲むことにする。ぶっちゃけ、余りワインは好きでも無いしね。


 双子とは言え、育った環境が違えば。食の好みだって変わってしまう。本当に悪役令嬢マリアの奴は、よっぽど上手く化けていたもんだ。


 ガルバドス家の家族との食事会は、成るべく当たり障りの無い話題に終始した。その内容は、馬車の中でジェシカ・ハウスマンさんに、教えられていた内容を、あたし的にアレンジした物を話した。そばには、あの怖い侍女様は居ないから、とっても気楽に話すことが出来た。


 晩餐が終わる頃になって、ご夫妻がかなり酔いが回ってきた頃を見計らって、エンデ・ガルバドス君が明日の朝の散歩に誘ってきた。この砦の中を、見て歩くのに、丁度良いので了承しておいた。この夫婦の様子から、卿は難しい話をしたところで、通じない気がしたから、領都ベレタでのことについて、話したところで、どうにも成らないと思うからだ。


 たとえお酒に強い体質の人達とは言え。これだけ飲んだら、記憶に残らないだろう。

 


 

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