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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ちょっとの善意 (余計なお世話)2

 あたしみたいな餓鬼には、子供を保護してあげる力は無い。マリア・ド・デニム伯爵令嬢の護衛件メイドの仕事は、かなり割の良い稼ぎには成る。命をかけた仕事だから、報酬も悪くない。領都に戻れば、自室も貰えることになっている。子供を食わせることぐらいは出来そうだけれど、其れはあくまでも父ちゃんが、保護者としていてくれるからである。

 あたし一人では、決める事が出来ないのは解っている。あたしはまだ大人じゃ無いのだから。父ちゃんに相談をした方が、後で楽が出来る。餓鬼のあたしには、一人の女の子の身の振り方に対しての責任は負うことが出来ない。こんな事は、本当は村長さんが考える事だと思う。

 あたしは、リタの手を引いて綱木のある方へ向かって歩いて行く。彼女の小さな手は、こんなに暑いのにもかかわらず、一寸ひんやりしている。若いのにこの子は冷え性なのかも知れないなと思う。

 教会の墓地を出て、幕屋の広場を越えたところに、綱木が作られている。その綱木には、二頭の軍馬がつながれている。その馬たちに、父ちゃんが飼葉を遣っているところだった。予定としては、ニックの弔いが終わり次第、第二次救援部隊の後を二人で、追いかける手はずになっている。

 此れからあたしは、ナーラダのリコのことを知らない村では、時々マリア・ド・デニム伯爵令嬢の振りを為て遣らなければならない。そうすることで、彼女の危険と精神的負担を和らげてやる事が仕事だ。そう、契約書には書いてあった。

 それないリに良い金になるし、それほど難しい事でもない。今のところ鼠退治は済んでいるから、伯爵令嬢が狙われることも無い。あたしが代わりに仕事をして、少し休ませてやれば良いだけ。ただ、急いで第二救援部隊に追いつかなければならなかった。正直しんどい。

「母ちゃんに相談できたか?」

 馬たちの首筋に触れながら、父ちゃんがあたしに声を掛けてきた。いつもと変わらないその表情は、少し怖い感じがする。長いこと一緒に住んでいるから、あたしは普通に接していられるけれども。知らない人間は怖いんだろうなと思う。

 リタがあたしの後ろに隠れた。子供達には怖がられているのだ。

「えっと。あたしこの子を、この村から連れ出そうかと思ってる」

「どういう事だ」

 あたしは、リタの状況を話した。たぶんこの村に居ることが、出来ないだろう事も付け加えて。本当なら賢者様が居てくれれば、あの人に押しつけてしまいたいのだけれど。行方知れずになっている以上、他に彼女の面倒を見てくれる人を思いつかない。その事を一生懸命に話す。

 今はナーラダ村には、身寄りの無い餓鬼の面倒を見る余力は無い。少なくとも、この水害が落着いて。小麦の収穫のめどが立つまでは、リタの面倒を見てくれる人間を、見つけることは難しいだろう。

読んでくれてありがとう。

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