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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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カテーナ領主夫婦 9

 煮込み料理は、夏野菜と豚肉を煮こんだ物で、香辛料をふんだんに使った物だ。砂糖は殆ど使われていない。それでも甘みが感じられるのは、一寸嬉しいことだろう。何より、意外にも野菜からも甘みは出るからね。


 この食卓に出されている物は、乙女ゲームさくらいろのきみに・・・のスチルに描かれているような、華美な物では無い。何より、王都近辺が舞台だから、元々の文化の違いも相当あるからね。どちらかというと、あっちの方が前世持ちとしては、見たことのあるカラフルな食卓だと思う。


 テーブルの上に置かれている料理の数々は、いわゆるマルーンの田舎料理だ。それでも、いわゆる客をもてなすための、ご馳走を用意してくれていることが判る。


 何しろ、あたしの左隣に座っているエンデ・ガルバドス君のもとには、赤ワインが注がれた、金属製のカップが置かれている。あたしの元にも金属製のカップが置かれている。中に注がれているのは、エンデ君と同じ赤ワインが注がれている。


 ガルバドス夫妻の手元には、大きな木のジョッキが置かれており。エールがなみなみと注がれている。二人とも、出されるそばから消費しているから、彼の大きな樽の存在が判る気がする。この家族全員、大酒飲みの家系なんだ。


 アンソニー・ガルバドス君の前に置かれているのが、ごく普通のカップに紅茶なのは救われる。流石に、あたしより年下が、エールをがぶ飲みするのは許せない気がする。


「マリアはワインの方が好きだったから、用意させている。うちの倅が、毒味役を買って出ているから、其奴の様子を見てから口を付けてみてくれ」


 実に豪快に食卓の料理に手を付けながら、ガルバドス卿が言葉を投げかけてくる。マリアはかなし幼い頃から、ワインの味を覚えていたらしいから、その事を知っている、この叔父さんが気を利かせてくれたのだろう。このワインや、エールはナイスミドルの執事さんが、手ずから給仕してくれた物だ。


 これは後で聞いた話なのだけれど。この領では、主にエールが盛んに造られて、其れなりに大きな家では自家製のエールを飲まれているらしい。ワインは其れほど多く造られていないので、このワインは取り寄せた物らしい。如何しても、輸送の段階で品質が落ちてしまったり、余計な物が混入されることもあるから、誠意を示すために、誰かが毒味をしてみせる。


 大概は、そこの家の使用人の誰かが、客の前で毒味をしてみせる物らしいのだけれど。其れが今回は、この家の嫡男であるエンデ・ガルバドス君が買って出てくれたのだろう。


 

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