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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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カテーナ領主夫婦 7

 正規なドレス。因みにこれはマリアの物だ。明るい青いドレス履き心地が、大変宜しくない。正式な食事会とも成れば、こう言った物を着込まなければいけないそうで。因みに、そう言ったジェシカ・ハウスマンさんは今頃、砦の中にある御屋敷で、侍女たちと食事会をしている。


 彼女達と食事をしながら、この砦の中の様子を聞き出すのが目的だって言っていた。其れが本当のことだとは思わないけれど。それでも、あたしにも、目的があるからね。こうして、ご夫妻との食事会の席があるのは、一寸有難いかな。この砦の主の正確なんか、判らないから、少しでも人となりを知れるなら。喜ばしいことだ。


 食事のテーブルに載せられている物は、ナーラダ村で食っていた物に、香辛料を使っている物が主で。特筆する物は、なにも無かった。お金は有っても、如何したって地元で取れる物が主になってしまうのは、仕方が無いことだろう。


 ガルバドス家の家族そろっての、食事に招かれた態のあたしは、出来るだけ良い笑顔を浮かべて、コーツイをしながら、立ち上がり歓迎の意を表してくれている、家族全員の顔を眺める。全員美形とは言いがたい人達、それでも心の温かさを感じさせる、表情は素敵だなって思った。


 何しろ、此所の当主様は禿げ頭のおっさんで、口元には結構デカい古傷がある。少なくとも、暗闇で遭いたくは無いご面相だ。彼の隣に立つ御婦人は、少しふくよかで全体的に大きい感じがする。何となく旦那さんより強いんじゃ無いかって気がする。


 この人も黙って、殺されるような人じゃ無い気がする。この砦は、3年後には、帝国によって陥落する。そうなれば、一気に帝国の軍勢がなだれ込む。其れを止める要の砦だ。若しかすると、だから奥様がこの砦に居たのかも知れ無い。


「このたびはお招きに預かり、ありがとう御座います」

「いえ、このような田舎料理で申し訳ありません。それでも、うちの料理人が心を込めて、作った物ばかりです。お口に合えば良いのですが」


 ガルバドス卿が、謙遜を含めたような言葉を投げかけてくる。本音は旨いから喰ってみな。そう顔に書いてある。其れって、貴族の顔じゃないよ。


 この人は、良い領主でもあるんだろうな。この間まで、世話に成っていたマッキントッシュ卿とは偉い違いだ。あの人とは、何度か食事を一緒にしたけれど。こんな台詞を聞いたことなど無かった。食い物が、不味くなるような話しが多くて、気分が悪かった。


 あんな人のが、あたしの大事な故郷の領主をしているなんて、かなり嫌な気持ちになったことを憶えている。未だに腹が立っているのは内緒だ。


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