カテーナ領主夫婦 5
「先生。お久しぶりです。息災なようで、安心しました」
一頻りハグを堪能したのか、ハウスマンさんは奥様と笑い合いながら、これまでの経緯を説明しながら。あたしに対しての、愚痴を奥様に言いつけている。何処まで、あたしの事が気に入らないのよ。言うことを聞かないで、勝手に色々と動いていたことはあったけれどもね。
まあ、マリアに 対する愚痴として、言っていたようだから。あたしの立場については、其れなりに気を遣っていくれているのだろうけれど。
「随分大きくなったな。結構美人さんになって、姫様もさぞ心配していることだろう。誘拐されたって聞いたときは、肝が冷えたぞ。平気か?」
「そうですね。平気ですよ。あたしのドッペルゲンガーに助けられてあげましたから」
マリアならこう答えるであろう、答えを返す。令嬢教育されている割に、あたしに対しては、結構きつい言い方をするんだよね。顔がそっくりだからか、我儘も言うし。いきなりあんな恥ずかしいところを見られているから、少しあたりがキツい。
「ドッペルゲンガーは良かったな。其れで、誘拐されないように、護身術を習っているんだって」
「いえ……弓を少しと、護身術を少しだけ。もう二度と誘拐されるようなことはないように為たいと持っていますわ」
手に触れられている以上。何かやって居ることは、丸わかりだろうから。適当に嘘を混ぜておく。実際、彼女もあたしに護身術と弓は習っているから、全くの嘘というわけでもない。本音は、もう少しおっぱいを大きくしたいだけなんだけれどもね。
胸の膨らみの下には、筋肉があって、其れのお陰で、少し格好良くなってきているって言ったら。私も習おうかしら、何て言うから付き合っているんだけれど。今の処は、結構一生懸命にやっている。あたしが居ない間は、誰か付き合ってくれる侍女を探すって言っていたけれど。練習していないと、あたしは思っているのとは内緒だ。
何しろあの子は、深窓の御令嬢だから。これまで、運動的なことなんかしてこなかったみたいだから。令嬢としては、平均的な運動神経なんだけれど。父ちゃんのことを殴りつけられるくらい、出鱈目に強い奥様の娘とも思えないんだよね。
以前、父ちゃんが顔に痣を作っていたことがあったんだけど。あれを付けたのが、奥様だったって聞いたときは驚いたんだ。大概は、殴られる前に、相手を捕まえちゃうから、其れで終わってしまうから。殴れるだけ、相当奥様の動きが速いって事だ。
「此所で話すようなことでもありませんな。其れでは改めまして、長い行軍お疲れ様でした。取りあえずお湯を用意しております。話しはそれから炉言うことに致しましょう」
ガルバドス卿の仕草は、武骨で武人の其れなのに。エスコートに繋ぐ動きは大した物だ。辺境を守る伯爵様って感じだ。




