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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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カテーナ領主夫婦

 ジェシカ・ハウスマンさんに、手を借りて、あたしは踏み台を降りる。実際には、彼女に手助けなど要らないのだけれど。マリア・ド・デニム伯爵令嬢なら、当然エスコートをしてくれる人は必要で、馬車を気軽に降りるわけにはいかない。貴族の娘として、外聞は気にしないといけないらしい。


 よくラノベなんかでは、女性をエスコートして、いわゆるお相手になる人がエスコートするのだけれど。側に居るのは、素敵な男性とはとてもでは無いけれど、お世辞にも言いたくないような連中ばかりがいる。実力のある、小隊を選んでいるのだから、素敵な殿方がいるわけもない。それに、速歩で此方に付かず居てきていた、レイのことをジェシカ・ハウスマンさんが止めたところを見ると、出自の判らない外国人を、近づけたくはないのだろう。


 それを言ったら、サリーさんも人種も違うし。それでも、彼女を一緒に居させるわけが解らない。これってダブルスタンダードよね。


 レイは、乙女ゲームさくらいろのきみに・・・の隠れ攻略対象で、全部のスチルを見ることが出来たら、攻略対象となるキャラだ。いわゆる、某国の王子様。悪役令嬢マリアを庇って、命を落とすエピソードが有る。


 そのエピソードの前に、彼の気持ちをヒロインちゃんが獲得できれば、怪物くんの矢は悪役令嬢マリアの心臓を貫いて、国を破滅させる希代の悪女を終わりにする。つまり、悪役令嬢マリアは二重の意味で、大事な恋心を台無しにさせられて、命を失うことになる。


 ま、悪役令嬢マリアが退場しても、それからの帝国の侵略戦争は終わらないのだけれどね。怪物くんが、動く頃には王都周辺に、帝国の軍隊がマルーン邦を滅ぼして、王都へ迫ろうとしていたのだから。


 あたしとしては、あの怪物くんを雇っていたのは誰かって事なんだけれど。乙女ゲームさくらいろのきみに・・・の中では、なにも描かれていないのよね。それに、この暗殺未遂のエピソードだって、レイルートが開示されてから、初めて知ることが出来ることだったから。


 他の攻略対象ルートでは、いつの間にか、側使いの美形君がいなくなって、更に悪役令嬢マリアの遣りようが、激しくなったくらいでしかなかった。其れも、何処か稚拙な行動が目立つようになる。レイルートに入って、初めて悪役令嬢マリアの行動が変わったことに、納得したのを憶えている。


 辺りを見渡すと、大きくて立派な城の中庭に、立っていることを実感する。砦と呼んでいるけれど、これは間違いなく、城と言って良いだろう。まあ、デニム家の御屋敷も、あれだって規模や堅牢さから言えば、立派な城だ。本国に対して、せめて呼び名だけでも、脅威とはならないと言うことを、示さなければならないのだろう。可笑しいことだと思うけどね。


 僅かなスチルではあるけれど。あたしが夢中で、遊んでいた乙女ゲームのスチル通りの城を見て、一寸感激している。いわゆる整地に降り立ったみたいな。


 百人規模の兵隊さんが、あたしのことを歓迎するように、敬礼をしている。


 マリアのことを意識して、ニッコリと微笑むと、可能な限りのコーツイをしてみせる。今のあたしは、指揮官ではなく、貴族の御令嬢として挨拶をするべきだと、ジェシカ・ハウスマンさんに言われていたからね。つい、敬礼をかしてしまいそうになる。


 






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