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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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初めまして、悪友のお嬢さん 4

 俺は物見の棟を降りて、この砦に駐屯する兵にマリア・ド・デニム伯爵令嬢一行の出迎えをするように命じると、騎士バティ・バートランド他二名を引き連れて、居館の前まで向かう。


 既に手はずが整えられているとおりに、邦の重要人物を迎えるために、百人の兵士が集められている。基本的には、この兵士の数が、この砦の守り手になる。そして、有事となれば、二千を越す戦力を保持することに成る。其れが、このカテーナ砦の戦力となる。


 このカテーナ砦の、戦力こそが悪意ある侵略者から、マルーン邦を守る力で在り。絶対防衛権とも言える物だった。其れも、最近は大夫危機的状況では、ある物の、だからと言って、此方に公金を運んできてくれている、遠征隊の者に感じさせて言い訳でも無い。


 筆頭執事以下、此所で働く使用人ほぼ全員が、出迎えるために中庭に、居館の中から出て来るのが見える。下働きの者から、侍女を含めた女たちも出て来ていた。


 これは徒然なこと乍ら、俺の愛する妻も子供たちも一緒に出て来ている。流石に、未だに乳母に面倒を見て貰わなければいけない、娘は此方には出て来ることはなかった。流石に、出迎えの最中に、ギャン泣き為れても困るだろうから、仕方が無い。



 兵隊達は、仲の良い者達で集まって、ざわざわと話をしているようだ。彼らは、練度が低いわけでもない。今の処、気を使う必要がないと判断しているのだろう。


 俺が降りてきたのに、気付いた者が、号令を上げる声が聞こえた。途端に、兵の動きが変わる。小隊ごとに、方形に並んで、俺を迎える姿勢を取る。此所に降りてきている者が全てでは無い。この砦を維持し、領都の安全を確保するために、今も働いている兵隊は此所に駐屯している者だけでは無いのだから。


 やがて、門を守る兵が、こちらに信号を送る姿が見える。遠征隊の車列が目視確認できるところまで、近付いてきたのだろう。俺の顔を見て、どのような態度を取るのか、実に楽しみに思う。ハーケンの奴が、どのように育てたのか興味をそそられる。いつの間にか、俺の顔が緩んできた。


 俺の笑顔は、怖いらしくて、マリア・ド・デニム伯爵令嬢には泣かれたことが思い出される。未だに怖いのか、俺の顔を見ると、娘には泣かれるけれど、怖がられなければ良いと思う。


 視線を感じて、ふと妻の方に顔を向けると。満面の笑みが返されてくる。彼女は、三十二歳の年齢とは思えないくらいに若々しく。素敵な女性だ。三人の子供を産んでいるにも拘わらず。容姿に陰りが見えない。 


 彼女は二人の息子を引き連れて、俺に近付いてくる。黒い髪を編み込み、上に上げた髪型が、中々に素敵だ。勿論、髪を下ろした姿も俺を魅了して止まない物がある。


 紺色に染められた、ドレスは俺が送った、いわば勝負するときの色だ。因みに、彼女が愛用している、サーコートの色も藍色に染められている。あれで、中々の手練れでもあるのだ。


 俺と結婚するときに、自分より弱い男は相手にならないと、俺を突っぱねたのは良い思いでに成っている。今だに頭が上がらないのは、仕方が無いことだと思っている。間違いなく俺の方が、弱いのだから。



 



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