初めまして、悪友のお嬢さん 3
今回の遠征隊の車列が、大きな森の木に隠れるのを確認すると、フォルテ・ド・ガルバドス伯爵。視線を側近たちの方に視線を向ける。今此所に来ているのは、三人のむさ苦しい騎士が一人に、彼の部下二人だ。
彼と殆ど体格的には、違がなく年齢も其れほど変りが無い癖に、豊かな黒髪を未だに保持している男だ。そろそろ白髪が交じってきてもいい頃合いにもかかららず。見るからに、美丈夫然とした面構えをしている。姫様に対して、未だに忠誠を誓ったことに拘って、騎士を名乗り続けている。
此奴は本来なら、子爵位を持つ領主の一人として、マルーン邦を支える立場にならなければならない男だ。其れが、家督を弟に譲り、この辺境の地を守る盾の役割を勤めている。
この砦の指揮権は、この俺が把握しているが、実働部隊となるこの男がこの砦に駐屯している、私兵の中枢となる。事実上の副官だ。他の控えている、二人は俺の護衛兵と言うことに成る。連中も、付き合いが長いお陰で、俺の意向は十分理解してくれている。古参の部下だ。
「遠征隊が到着するのは、あと小一時間くらいでしょうか。久しぶりにマリア様にお目にかかれるのは、二年ぶりくらいでしょうか。随分大きく成られたことでしょうね」
「そうだな。俺も久しぶりに会えるのが楽しみだよ」
忌々しいほどに、黒い髪をかき上げながら、俺に話しかける。この騎士は、マリア御嬢様によく懐かれていた。俺と同じように、血煙の中で戦う仕事を為ている癖に、幼かった御嬢様の笑顔を独占していた。実に面白くないことに、何人も女を取っ替え引っ替えしていたことを良く憶えている。
むかつくから、姫様からの手紙のことは教えてやらないことにする。何しろこの俺は、会う度に怖がられていたからな。今回初めましての、ハーケンの娘はどんな反応をするかな。本人ではなく、影武者を務める娘にも怖がられたら、実際へこむことになりそうだ。




